
タイの山あいに 何百年もの間、傘をつくりつづけてきた村がありました。
傘は、伝統的な絵柄の 花とチョウで かざられていました。
傘の絵つけをはじめた、ちいさなヌットのはなしです。
毎年、正月に
村いちばんの 絵付けをした 「かさの女王さま」が えらばれ
そのひとを 先頭にして かさぎょうれつを します
ちいさなヌットは
おかあさんのかさと おなじくらい じょうずに描けたので、
5ほんの 白いかさを まかせてもらいました
ヌットは
花ではなく、ゾウを かいてしまいました
絵つけは あそびではなく 仕事でした
ヌットは、
それからは 花とチョウを かきました
でも、
あまった 竹とかみで ちいさなかさを つくり
ゾウの絵を かきました
お正月の前に
王さまが かさの女王を えらびに やってきました
村びとたちは
最高のかさを 家の そとに ひろげました
王さまは
ヌットの ゾウのかさに 目を とめられました

「きみが あのかさに 絵つけしたのですか」
「さようでごさいます」
「おなまえは?」
「ヌットでございます」
「花やチョウではなく、どうしてゾウなのですか」
「ええと・・・」
ヌットは おもわず いいました
「わたくしは ゾウが すきなので ございます」
王さまは いいました
「この子は こころから 絵をつけたので
わたしは ことしの かさの女王に ヌットを えらびます」
・・・
伝統的な花とチョウの絵柄にとらわれることなく、描きたいものを描き、絵つけをしたヌット。「この子は こころから 絵をつけた」と王さまはヌットを評価しました。ヌットが描いたゾウの絵は、あたらしい傘の絵柄になることと思います。伝統は、こうして革新されていくのでしょう。
タイを舞台にした絵本『しーっ! ぼうやがおひるねしているの』を以前に紹介しています。
・・・
※『かさの女王さま』 シリン・イム・ブリッジズ作、ユ・テウン絵、松井るり子訳、らんか社 2008年 (2025/5/11)









