ふるはしかずおの絵本ブログ3

『きりかぶのあかちゃん』-自然との共生

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「ぞうさん」  の 詩人まど・みちおさんの    童話です。  

どさんの    自然観が    反映されているようです。

     ・・・

どうぶつ村の 入り口に、

おおきな きりかぶが ありました。

      ( えっ。  きりかぶ! どうして、 きりかぶなの? )

きりかぶは、

切られる前は、

天まで とどく おおきな木。

村の 象徴のような木でした。 ( やっぱり!)

         ・・・

でも、 去年の    ふゆ

どうぶつたちが、  その木を   切って、

たきぎに してしまった のです。

そして、

切ったあとになって、

どうぶつたちは、 きりかぶに 頼むのでした。

         ・・・

      はる - さびしいから、 きれいな花 ( 美 ) を、

      なつ - あついから、 すずしい木かげ ( やすらぎ ) を、

      あき - おなかが へるから、 おいしい木の実 ( みのり ) をくださいと。

         ・・・

でも、  

きりかぶは、

花、

木かげ、

木の実の  かわりに

「 たんこぶ」 を あげるのでした。

「 たんこぶ 」 は、 自然の しっぺ がえしです。

自分たちが したことに よって、

おおきな木 ( 自然 ) のめぐみを 失っているのです。

それは、

わたしたちの すがたでも あります。

       ( 自業自得。)

        ・・・   

おおきなたんこぶを もらった

ぞうは、

「ぞうも ありがとう 」 ( 笑、 しゃれです )。

ちいさなたんこぶを もらった

のねずみは、

「 ありがとうございまちゅう 」  ( 笑 )。

      ・・・

また、 ふゆ が やってきました。

はだかの きりかぶに ゆきが  ふりかかるのは、なんだか  つめたそうで、   いたそうです。  

      ・・・

のねずみ、

りす、

うさぎたち、

そして、

村の どうぶつたちは、

みんな、

枯れ草の  ふとんを、 きりかぶに  かけてあげます。

( もちろん、 読者も、 心のなかで、 そうしていること でしょう。 )

      ・・・

そして、  はる が   訪れると  ・・・

きりかぶは、  新芽の 「 あかちゃん 」 を   だっこしている のです。

みんなは   歌います。

      あかちゃん 

      あかちゃん 

      おおきく なあれ 

      おおきく なあれ

だれの目にも、  天までとどく    おおきな木が    みえるようでした。

      ・・・

自然環境の問題が 映しだされている、

寓意にみちた 作品です。

きりかぶは 「 自然 」、

どうぶつたちは 「人間 」 のたとえです。

自然と 共生すること、

自然を 守ることは、

わたしたちの幸せと 結びついているのです。

      ・・・

まどさんは、  

1935年(!) のエッセイ「動物を愛する心」で こう言っていました。

少し長くなりますが、 まどさんの自然観の エッセンスを 示しています。

      ・・・

   この世の中のありとあらゆるものが、 夫々に 自分としての 形をもち、 性質をもち、 互いに 相関係してゆくと 言う事は、 何と言う  大きい 真実であろう。  路傍の 石ころは   石ころ としての  使命をもち、 野の草は  草としての 使命をもっている。  石ころ以外の  何ものも  石ころに なること事は  出来ない。  草を除いては  他の如何なるものと 雖も、 草となり得ない。

  だから、 世の中の あらゆるものは、価値的に  みんな 平等である。 みんなが みんな、 夫々に尊いのだ。みんながみんな、 心ゆくままに  存在して いい筈なのだ。

   私は こうした事を 考えるとき、 しみじみと  生きていることの 嬉しさが  身にしみる。

      ・・・

※ 『 きりかぶの あかちゃん 』    まど・みちお文、   白根美代子絵、  国土社  1974年  現在、 この絵本の入手は むずかしいようです。

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