なっちゃんの家に 赤ちゃんが、 うまれました。
ママは、 赤ちゃんに かかりっきり。
「 ちょっとだけ 」 かまってほしいのに。
「 ちょっとだけ 」 の表現に、
なっちゃんの ゆれる心が、 見えます。
健気な なっちゃん。
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おかいものに いくとき、
なっちゃんは ママの スカートを
“ ちょっとだけ ” つかんで あるきました。
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ぎゅうにゅうを コップに いれようとして、
“ ちょっとだけ ” いれることが できました。
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パシャマに きがえるのも、
かみのけを むすぶのも、
「 あかちゃんって かわいいでしょう?」 と言われても、
ブランコに のっても、
みんな ちょっとだけ。
ねむたくなったとき、 なっちゃんが いいました。
「 ママ、 “ ちょっと だけ ” だっこして・・・・・」
「 ちょっと だけ? 」
ママが なっちゃんに ききました。
「 うん、 “ ちょっと だけ ” で いいから 」
なっちゃんは ねむい めを
こすりながら、 いいました。
・・・
この後の ママのことばが すてきです。
「 “ ちょっと だけ ” じゃなくて いっぱい だっこ
したいんですけど いいですか?」
ママは やさしく わらって、 もう いちど ききました。
「 いいですよ! 」
なっちゃんも にっこり わらって いました。
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なっちゃんの心のうごきに、 読者は共感します。おねえさんになったことで感じる 切ない気持ちもあります。おかあさんさんに甘えられないさびしさ。
でも、
それを乗りこえようとする 健気ななっちゃん。
やさしく見守るおかあさん。
絵は、なっちゃんとおかあさんの イメージに ぴったり。
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子どもを抱きしめるおかあさんの絵。
読者も温かい気持ちになります。
おかあさんとの 絆のたいせつさ。
なっちゃんは女の子です。でも、なっちゃんのことは 男の子にもあてはまります。
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※ 『 ちょっとだけ 』 瀧村有子さく 鈴木永子え 福音館書店 2007年発行
【追記】
『 ねえ だっこして 』 ( 竹下文子作、 田中代絵、 金の星社 ) は、 大好きなお母さんに 赤ちゃんが 生まれて、 すこしさびしい気持ちを ネコの視点から描いた作品です。 だっこして ほしい気持ちと、 我慢する気持ち。 なっちゃんの世界と かさなります。 田中清代さんは、 『 気のいい火山弾 』 を描いた人です。