『ユリシーズ』の作者、ジェイムズ・ジョイス(1882年~1941年)が、孫に書きおくったはなしです。翻訳は丸谷才一さん。でも、翻訳は歴史的假名づかひです。
( 絵本でですか ? )
ええ。でも、紹介は現代仮名遣いでします。
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ボージャンシーは、ロアール川の岸辺にある町。ロアール川はとてもひろい川でした。でも、橋がなかったので、人びとは、舟に乗って川を渡らなければなりませんでした。
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悪魔は
いつも新聞をよんでいたので、ボージャンシーの人たち が、橋がなくて、こまっていることを知っていました。
悪魔は言います。橋をかけてあげましょう。
(で、条件 は ?)
一番はじめに、橋を渡るものが、わたしの家来になること。
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市長は応じ、悪魔は橋をかけます。
でも、だれが最初にわたるのでしょうか ?
( だれもわたりませんよね。)
だつて こはいもの 。
( 歴史的假名づかひ! あれ ? )
・・・
市長 は、ねこを抱いてやってきました。
( なんとなくわかります、結末 )
市長は、バケツの水を ねこに
ザブリ !
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ねこは、
橋をわたり、
悪魔のうでにとびこみました。
( やっぱり !)
結局、家来になったのは ねこ。それから、この町の人たちのことを「ボージャンシーの 猫」というのです。ねこが登場するあたりから、結末がわかっているのですが・・・わかっていても、読みたくなるはなしです。語り口がおもしろく、間がいきています。
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※『 猫と悪魔 』 ジェイムズ・ジョイス作、ジェラルド・ローズ絵、丸谷才一 訳 小学館 19
【 追 記 】
丸谷才一さんの翻訳方針は、 歴史的假名づかひを採用し、漢字を大いに使い 分かち書きをおこなわない主義です。「これぢゃあ、仕方がないでせう」「かはいい猫」「遊んだりしてゐます」。こんな調子です。 また、ジェラルド・ローズの絵もいいですね。入手が むずかしい絵本ですが、 公立の図書館にはあるかもしれません。