ノーベル文学賞作家の トニ・モリソンの絵本です。
THE BIG BOX ( 原題 )
大きな箱とはなんでしょうか。
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パティ
ミッキー
ライザの 3人がいるところは、おおきな囲いのなか。
囲いのなかは 安全だけれど、
窓がない、
日がささない、
外へでられない。
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親たちは、なんでも くれる。
すごいものを くれる。
でも、
パティ、
ミッキー、
ライザは じぶんたちの自由を、手に入れられない。
パティは、 学校で、
ミッキーは、 街のとおりで、
ライザ は、 野原で、
おしゃべりしたり、あそんだり、ふざけたり、大声をだしたり、勝手なことをして、おとなたちを、いらいらさせるのです。
( でも、それが子ども )
親たちは 言います。
きみの親も わたしたちも、 おなじ意見だ。
きみは、 じぶんの自由というものを、
大事にしていない
パティ、 ミッキー、 ライザは 答えます。
ウサギだって、
ぴょんぴょん 跳びはねるのに。
ビーバーだって、かじりたいときに、 木をかじるのに。
自由というが、
大人たちの 言うようなものなら、
それは わたしの 自由じゃない。
それでは ぼくの 自由じゃない。
じぶんの 自由を わたしたくない。
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子どもの自由を束縛しているのは大人でしょうか? また、大人だけでしょうか。むずかしい問題です。
でも、この絵本の親たちが、子どもたちとまっすぐに向き合っていないことは確かです。パティ、ミッキー、ライザの親たちが、彼らに会いにくるのは 「いつも水曜日の夜」。たくさんの物を持ってくるのに、なにかが足りません。足りないもの(愛?)を手にれる自由、「おおきな箱」から出る自由が、子どもたちにあります。子どもと正面から向き合うことをすすめる、大人に向けた絵本です。
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※『 子どもたちに 自由を!』 トニ・モリソン文、 ジゼル・ポター絵、長田弘訳 みすず書房 2002年
【 追 記 】
ジゼル・ポターの人物描写は ちょっと風変わりです。好きな画家ですが、好みがわかれるかもしれません。彼女の絵は『 ほんとうのことを いってもいいの 』(パトリシア・C. マキサック文)でも 紹介しています。 (2017/5/2)