関西弁を話す、わかい男の先生と
島の子どもたちの触れあいを、ぼく(ケン)の視点から描きます。
「会話」を中心にしてストーリーを展開 する方法です。
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シマンチュ になりたくてやってきた 先生。
神戸から沖縄の渡嘉敷島にやってきました。
はじめての授業で、
お父さんが病気で、
ぼく(ケン)が 神戸からひとり来たことを知り、
「そうなんかァ。あんた、えらいなあ」。
ぼくは、島一番のウミンチュ のおじいちゃんと暮らしています。
サバニに乗って漁にでてる ぼく。
日に焼けている ぼくです。
・・・
先生はぼくたちに聞きます。
「おきなわのことばを ウチナーグチというやろ。みな、ちゃんと話せるか?」
ジローが、げんきよく立ちます。
「ヒージャー、ジーマミ、ポーポー・・・」(「ヒージャー」はヤギ、「ジーマミ」はピーナツ。「ポーポー」は菓子の名前)
「ハハハ・・・ジローくん、ありがとう」
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それから、ぼくたちと先生の話題は、
ハブ、
島の滝、
なぞなぞ問答です。
「地球では、海と陸と、どっちが ひろい」
「マグロは どこで ねむるのやろ?」
「コバンザメは、サメのなかま?」
「タツノオトシゴは 魚か?」
オスになったり、メスになったりする クマノミのこと、
「カヤをつってねる魚がいるけど、しってる?」(アオブダイ)
( とても生き生きとした会話です。)
なんでも知っている 先生。
でも、先生にも泣き所があります。
「ぼくは、あまり、およげないのや」
マキちゃんは、夏に遠泳があることを教えます。
「先生だって、がんばるって」
そして、みんなで、教室の中で、平およぎのかっこうして練習をするのです。
「いーちィ、にィーい」
「いーちィ、にィーい」
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な、な、おじいちゃん。
先生はおよげるとおもう?
ぼく、ぜったい、およげるとおもう。
先生、がんばれ!
いきいきとした会話中心の文章です。そのなかに、語り手のぼくの気持ちが織りこまれている個性的な文体です。また、たくさんの話題をもっている先生。子どもと同じ目線に立っている魅力的な先生。子どもたちと先生のこころが通じ合っていく様子がよくわかります。子どもたちも個性的に描かれています。さいごは、みんなで平泳ぎのかっこうして練習をしますが、子どもたちと先生の間が縮まり、クラスがひとつになりました。( 上の絵 )
坪谷令子さんの絵は、沖縄の海を想像させるブルーを基調に、人物たち、さかな、花、鳥、植物を描き、この世界に奥行と彩りをあたえています。会話中心の文章に対して、絵は 描写と説明 の役割をになっています。
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※『先生はシマンチュ一年生』 灰谷 健次郎文、坪谷令子絵、童心社 2003年
【 追 記 】
なぞなぞ問答の答えは、本文の会話のなかにありますが、答えを書いておきます。
「地球では、海と陸と、どっちが ひろい」(地球の70%が海です)
「マグロは どこで ねむるのやろ?」(泳ぎながら眠る)
「コバンザメは、サメのなかま?」(サメではなく、スズキのなかま)
「ほな、タツノオトシゴは 魚か?」(さかな) (2018/4/25)