ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 パパ・ヴァイト ナチスに立ち向かった盲目の人 』

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ユダヤ人を救った 盲目のドイツ人、
オットー・ヴァイトの話です。
彼に救われた少女、インゲが語ります。
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ベルリンの町で、視覚障害者の作業所を運営していた、ヴァイト。
盲人のユダヤ人を雇い、ほうきとブラシをつくっていました。みんな、親しみをこめて、「パパ・ヴァイト」と呼んでいます。彼の作業所は、ひとつの 大きな家族のようでした

しかし、ナチスの規則は厳しさをまし、みんな不安になりました。明日何が起こるか、全くわからなかったからです。

ユダヤ人は、スポーツや体操の団体から 退会しなければならない
1933年4月25日

ベルリンのユダヤ人は、午後4時から5時までの間のみ食料品を買ってよい。                    1940年7月4日

すべてのユダヤ人は 強制労働の義務がある。   1941年3月4日

ユダヤ人には 新鮮な牛乳の配給を禁止する。   1942年7月12日

ある日、
ユダヤ人の職人たちは、秘密警察に連行されました。
ヴァイトは、高級なほうきやブラシ、お金をこっそりわたして、みんなを助けました。

ユダヤ人のスパイもでてきます。スパイによって 逮捕されるユダヤ人の家族。友人のアリスも捕まりました。ヴァイトは、アウシュビッツまでアリスを救いに出かけます。彼は、アリスのためにとなり町に部屋を借り、洋服とお金を用意しました。戦争が終わる直前、アリスはアウシュビッツを脱出します。
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ヴァイトは、戦後も孤児院や老人ホームをつくって、ユダヤ人を支援し続けました。

ナチス支配下のドイツで何が起こっていたのか、すこしわかったように思います。文中の法令は、ニュルンベルク法等でユダヤ人に強制されたものです。(前後の見開きにあります。必読です。) 法律によって 日常生活の隅々まで、規制され支配されていた ことがわかります。情報と行動が制限され、労働が強要され、生きること自体が難しい情況が、大量虐殺の前に起っていました。こうした状況のなかで、オットー・ヴァイトのように、勇気と信念と行動力をもってユダヤ人を助けた人が、ナチス支配下のドイツにいました。
ヴァイトさんは、1947年12月に亡くなりましたが、彼の盲人作業所は、現在ナチスへの抵抗運動を記念する記念館となっています。
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※『 パパ・ヴァイト ナチスに立ち向かった盲目の人 』 インゲ・ドイチュクローン作、ルーカス・リューゲンベルク絵、藤村美織訳 汐文社 2015年(2001年初版 ドイツ) 小学校高学年~ (2015/2/15)

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