ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 アライバル 』- 移民たちのこころの風景

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移民と難民のものがたり
文字のない絵本です。
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言葉にしてみますと、次のようなことが描かれた絵本です。
故郷を離れる家族、
家族の別れ、
一人で旅たつ男(主人公)、
航海、
タイタニック号のような移民船、
さまざまな雲、
船上の様子、

入国検査、
フリッツ・ラングの映画「メトロポリス」(1927年)のような世界、
街の人びと、
あたらしい生活への不安、
「モダン・タイムス」的状況、
きみょうな動物たち、
おかしな食べもの、
出会い、
祖国の弾圧から逃れる夫婦、
ある老人が語る戦争の体験、
突撃と死、
廃墟、
離れた家族に送る手紙をおくる男(主人公)、
家族の再会、
希望、
あたらしい出発
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また、絵本にはたくさんの人びと(移民と難民)が描かれています。
肖像画のような移民たちの
顔、
顔、
顔、
顔に
つよく惹きつけられます。
ボイラーに石炭をくべる アジア系の女性、
男を食事に招き、談笑する 家族、
出征と地獄のような戦地での記憶を語る 老人
一人ひとりに歴史があり、人生があります。
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ファンタジーの形式を借りて表現された移民と難民の世界です。しかし、ドキュメンタリーのようでもあります。タイトルの「アライバル」とは、まさに到着の意味です。それに加えて、新参者、誕生、赤ん坊の意味もあります。到着であり誕生でもある「アライバル」。この絵本の内容にぴったりのタイトルです。
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セピア調、モノクロの絵は、現実的でもあり非現実的でもあるような世界、馴染みのない町でもあり見なれた町でもあるような風景、ありそうでいて・ありそうもない空想、美しく恐ろしいものがたり、異質なものたちが混沌と存在しているふしぎな世界です。移民たちには、世界はこのように見えるのです。移民たちの深層心理を描いているように見えます。読者は、この世界のなかで浮遊するような感覚とアンビバレントな感情を体験します。
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最後の場面は、主人公のむすめが、新参者(アライバル)の女の子に道を教えています。彼女が指差す方向に、この混沌とした世界のなかに立ちあがるあかるい未来を見たいと思います。サイレント映画のようで、映像として見たいと思いました。
20世紀は大量移民と大量難民の時代でした。それはいまも続いています。
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※『アライバル』 ショーン・タン作・絵、小林 美幸訳  河出書房新社  2011年
【 追記 】
『アライバル』はⅠ~Ⅵにわかれ、全部で124頁もある作品です。上の紹介は本の一部であり筆者の印象の記述です。また、オーストラリア児童図書賞、アングレーム国際漫画祭最優秀作品賞などを受賞しています。  (2018/8/29)

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