ロシアの民話です。
「ゆきむすめ」の絵本は他にもありますが、スズキコージさんの絵が独特のこの絵本を紹介します。
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子どものいない おじいさんとおばあさん。
「こどもが ほしい」と願っています。
真冬のある日、
ゆきだるをつくる子たちを見て、
ふたりは、ゆきむすめ をつくりました。
まるい目をつけたとき、ゆきむすめは、にこっと笑い、おじいさんとおばあさんの家のほうへ歩き出しました。
「おじいさん、かみさまが、このこをくださったんですよ」
ゆきむすめは、やさしい利口な子でした。
友達もすぐできました。
みんなは、いつまでも ゆきむすめと遊んでいたいと思いました。
春が 来て、
ゆきむすめは なんとなく元気がなくなり、外で遊ばなくなりました。
夏まつりが近づき、
子どもたちは木苺をつみにいきました。
「そとは あつすぎるわ。わたしは いかないわ」
子どもたちは、嫌がるゆきむすめを連れ出しました。
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日が暮れて、
みんなは、焚き火を飛びこえる遊びをはじめました。
ゆきむすめの番になりました。
「なぜ とばないの?」
「とんでごらん、おもしろいから」
みんなに急かされ、
ゆきむすめは 焚き火を飛び越えようとしました。
その途端、ゆきむすめは 消えてなくなりました。
空には、ちいさな雲が浮かんで 流れていきます。
切なくなるラストです。ゆきむすめを失って、おじいさんとおばあさんは、悲しみにくれたことでしょう。悲しい最後ですが、ゆきむすめとの楽しい思い出まで 失われたわけではありません。
ゆきむすめは 雪の世界に帰っていきましたが、また冬におじいさんとおばあさんは、ゆきむすめをつくることでしょう。そして、ゆきむすめは、きっとおじいさんとおばあさんの元に 戻ってくることでしょう。そのような未来(希望)が見えるように思います。季節はめぐります。
スズキコージさんの絵がユニークです。とてもかわいい繊細なゆきむすめを描きました。絵本作家としての彼のデビュー作です。文章は詩人で童話作家の岸田衿子さんです。内田莉莎子作、佐藤忠良絵の『 ゆきむすめ 』(福音館書店)もあります。この絵本もおすすめです。
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※『 ゆきむすめ 』 岸田 衿子文、スズキ コージ絵、ビリケン出版 2005年 (2019//4/9)