1964年に翻訳された長く愛されている絵本(Frogs Merry 1961)です。
おたまじゃくしが成長し、4匹のかえるになりました。
かれらの1年が描かれています。
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4匹のかえるは、もぐったり、およいだり、あそんだり……
かたつむりを隠す遊びをはじめました。
かたつむりを見つけようとする かえるたち。
ここにもない
ここでもない
あれ これは いしだった。
あ みつかった!
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あぶない!
さぎたちが やって来た。
蓮の影に隠れる かえるたち。
見つけられずにさっていく さぎたち。
輪になってあそぶ かえる。
そこへ、かえるを食べようと亀がやってきます。
おや、はてな、
かえるたちは、もう見えません。
ほら、ここだよ。
亀のせなかで 笑っている かえるたち。
でも、亀はわからない。
亀は、ぷんぷん怒って、水の中へもぐっていきました。
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お腹が空いた かえるたち。
トンボの卵と水草でおいしいごはん。
夜、
みんなと 歌う 夏の歌。うたって遊ぶ かえるたち。
冬は、あたたかい 土のなか。
春まで冬眠です。
4匹のかえるは、さぎや亀に食べられてしまう厳しい世界にいきています。でも、そのすがたは、好奇心がいっぱいで、遊びたい子どものすがたそのものです。遊びたい、知りたい、食べたい、眠りたいという欲求は、子どもたちの基本的な欲求です。読者のしたいことをするかえるの行動は力強く魅力的です。
みどり、青、黒、白をつかったシンプルな絵ですが、主人公のかえるたちに動きがあり、躍動感を感じます。顔の表情がとてもいい。アメリカ版「鳥獣戯画」です。
また、みじかい文をかさねた文章にリズム感があります。きびきびした印象をあたえるのは、常体の文章体にもありそうです。人物(さぎや亀)は知らないのに、読者はかえるがどこにいるか知っています。人物と読者のこの関係も絵本の巧みなしかけです。
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※『 ゆかいな かえる 』ジュリエット・ケペシュ作・絵 石井 桃子訳 福音館書店 1964年 (2019/1/11)