原題は The Other Side ( 2001年 )。
冒頭を 引用します。
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そのなつ、まちをしきるさく が、 いつもより おおきくみえた。
わたしたちは、 さく の こっちがわに すんでいた。
さくの むこうがわには、 しろい ひとたちが すんでいた。
「 むこうがわに いってはだめよ。 きけんです からね 」
ママは、 そういっていた。
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もうおわかりでしょう。
アメリカの 人種差別を テーマにした 絵本です。
「 さく 」とは、
白人と黒人を へだてる 象徴的な存在です。
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黒人の 女の子、 クローバー。
白人の 女の子、 アニー。
さくを 越えてはいけない と 言われている
ふたり 。
このふたりが 主人公ですが、
視点は、 クローバーにあります。
アニーが
話しかけてきました。
「 うちは あそこ。 せんたくものが みえるでしょ。 あのブラウスは
わたしのよ 」
そう言って アニーはにっこり。
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さくを 越えては いけないって 言うけど、
「 さくに こしかけちゃ いけないとは、 いってないよ 」
と アニー。
「 それも そうだね 」と クローバー。
ふたりは、
さくに こしかけ
なかよしに。
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ふたりを 見ていた
クローバーの ママは、 言います。
「 あたらしい ともだちが できたのね 」。
ふたりは、
その後、
クローバーの ともだちとも 遊ぶようになりました。
みんなが、
さくの まわりに 集まるところが
最後の場面です。
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「 こんな ふるい さく 、 そのうち だれかが きて とりこわすよね 」
アニーが言った。
わたしも うなずいて、言った。
「 そのうち きっとね 」
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人種差別という おもいテーマです。
しかし、
描かれているのは、
子どもたちの 日常の風景。
クローバーと アニーの関係は、
「 おんなのこ 」、 「 あのこ 」から 、
アニー、 わたしとアニー、 あたらしい ともだち、
わたしたち 、 みんなへと かわっていきます。
彼女たちの 日常を通して、
差別のない社会、
あかるい未来が、
展望されています。
また、
ルイスの絵の
あかるい 太陽の ひかり 、
空気感、
人物をみる やさしい視線が 印象的です。
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※ 『 むこうがわの あのこ 』 ジャクリーン・ウッドソン文、 E.B.ルイス絵、
さくまゆみこ訳 光村教育図書 2010年