小学校のころ、そらくんが したようなことを やってみたかな?
「ある、ある」という声が 聞こえてきそうです。
・・・
学校からの かえりみち。
そらくんは、つぶやきました。
きようは、
この しろいせんの うえを あるいて かえろう。
道路の 白い線だけを 通って、
ゆっくり ゆっくり
そろーり そろーり
すすみます。
・・・
白い線から はずれるから、
トンボ
ザリガニと 遊ぶのも、きょうはなし。
横断歩道に でると、
「せーの!」
ぽーん ぽーんと とんで わたります。
商店街では、
工事中のコーンが、白い線のうえに あります。
でも、てっぺんが 白くなっています。
「しろに つかまれば だいじょうぶ」。
こんどは、
おおきな犬が 道を ふさいでいます。
( 一難去って また一難。)
犬が 子犬に 気を取られている間に
そらくんは、どきどきしながら、とおりぬけました。
もうすぐ、家です。
でも、… なんということでしょう!
家は すぐそこなのに 白い線が ありません。
どうする、そらくん?
・・・
「うちの まえで、なにしてるの?・・・さきに いくわよ」
おかあさんです。
おかあさんの 白い服が ゆれます。
「おかあさん、まって」。
そらくんは
「えい!!」
・・・
「あらあら、どうしたの? あまえちゃって」
おかあさんは、うれしそうに 笑いました。
そらくんが、おかあさんの背中にのったのはなぜか、読者は知っています。知らないのは おかあさんだけ。そらくんと読者の ちいさな秘密です。最後のページで、そらくんはこちらを向いて ウィンクをしています。
現実から 空想への飛躍が、絵で 表現されています。『 ぼく ひこうき 』にも見られる、ひがしさんの絵本の特徴のひとつです。横断歩道などの絵に見られる 非現実な世界は、そらくんから見た世界、彼の心の表現です。そして、ページをめくって生まれる イメージの流れが とても自然です。
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※『 ぼくの かえりみち 』 ひがし ちから作・絵 BL出版 2008年 (2017/6/11)