ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 ねずみと くじら 』- ふたつの 救出劇

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ねずみの エーモスくじらの ポーリス
ふたりの友情のドラマです。
・・・
海の大好きな ねずみのエーモス
ある日、
自分でつくった船で 大海原へ。
でも、ある晩、
エーモスは、船から落ちてしまいました。
・・・
海をただようエーモス。
孤独なエーモス。
ついに、
力が尽きようとしたとき、1頭のくじらが、あらわれます。
くじらの ポーリス です。
エーモスは、ポーリスに助けられ、
無事、故郷に帰ります。
( ここで、 終わり? )
( いいえ、おはなしは、どんどん すすみます。 )

長い歳月がたちました。
こんどは、くじらのポーリス に危機が訪れます。
ポーリスは、浜辺に打ち上げられ、
身動きがまったくできません。
・・・
ポーリスを見つけた エーモス。
でも、どうやって 助ければ いいのでしょう。
ポーリスは、海の おおきなくじら
エーモスは、陸の ちいさなねずみ です

そこへ、2頭のゾウがやってきます。
( ゾウには! )
( もちろん! )
エーモス
エーモスが連れてきたのです。
そして、くじらの ポーリスを無事にすくい出します。
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ねずみのエーモスの危機をすくう ポーリス。
くじらのポーリスの危機をすくう エーモス。
ふたつの救出劇、ふたりの友情のドラマです。最後に、エーモスは「さよなら、なかよしのくじら」とちいさな声でなきます。ポーリスは「さよなら、なかよしのねずみ」とほえます。ふたりは涙を流し別れます。語り手は言います。

ふたりは、このさき二どと あえないことを
しっていました。
そして ぜったいに あいてを わすれないことも
しっていました。

おたがいの人生のなかで会うのは 2回だけです。それも、それぞれの危機の時に。まさかの時の友こそ真の友。これからも記憶の中に生きるふたりの友情です。このドラマにウィリアム・スタイグの人生観が見えるように思います。
・・・
※『 ねずみと くじら 』 ウィリアム・スタイグ作 瀬田貞二訳 評論社 1976年  (2019/2/25)

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