ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 どうぐは なくても 』- 教訓的なビアンキの動物記

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「どうぐは なくても」って、なんのことでしょうか。
タイトルが、読者への 仕掛けになっています。
そして、書き出しも。

かなづち のこぎり かんな のみ。
いえを たてるときには どうぐを つかいます。
でも どうぐを つかわないで たてられた いえも あるんです
どんな いえでしょう?
   ( 答え 鳥の巣。)

カササギ の巣は、
枯れ枝を 組んであります。
でも、いちども 道具を 使いません。
・・・
ヨタカ
「わたしは いえなど つくらんよ! ほら じめんのうえで たまごを だいているだけさ」

ツリスガラ
ツリスガラは、綿毛で 巣をつくります。
巣は 羽ぶとんみたいに ふわふわです。
わたげや 草をあつめて つくります。
道具は 使いません。 ( 上の絵 )
・・・
ツバメ
ツバメは、藁と泥をこねて 巣をつくります。
「どうぐなんか いらないよ」

ウタツグミ
ウタツグミの巣の内側は、ちゃわんのように すべすべです。
「きくずと つちを つばで まぜあわせて ぬったんだ」
・・・
キツツキ
「くちばしを つかって だいくしごとをするのが いちばんですから」
・・・
ワシ
「どうぐとやらを いえに なげこんでくれないかな」
かなづち
のこぎり
かんな
釘抜きは ワシのいえの材料に されてしまいました。

どうぐは なくても
とりは みんな いえづくりの めいじんなのです

鳥たちが、いえ(巣)の作り方を 語ります。その材料は、自然の中にある物です。枯枝、どろ、わら、やなぎの綿毛、草、木くずなどをつかって、子どもを育てるためにすばらしい巣をつくる鳥たち。その事実に深い意味と価値を感じました。レヴィ=ストロースの言う「ブリコラージュ」(bricolage)かな。

文学性豊かで教訓的なビアンキの動物記。語り手と鳥たちが、対話をしているように書かれています。読者は、ふたりの人物のそばで、その会話を聞いているような気持ちになります。また、チャルーシナの絵に、ロシアの季節感と空気を感じます。
・・・
※『どうぐはなくても』 ビターリー・V・ビアンキ作、N.チャルーシナ絵、田中友子訳、福音館書店  2007年

【 追 記 】
ブリコラージュ(bricolage)-あり合わせの道具や材料で物を作ること。日曜大工。器用仕事。転じて、持ち合わせているもので、現状を切り抜けること。(デジタル大辞泉)  (2017/6/15)

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