ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 けんかの きもち 』- こうして ひとつ成長する

778
子どもたちの遊び場、「あそび島」のおはなし。
先生もいて、たくさんの子どもたちが、毎日、遊んでいます。
     ・・・
ぼくは たい。
ぼくは、一番の仲良しの こうたと、すっごい けんかをした。
けりを いれて、パンチして、とびかかった。
こうたも、ケリをいれ、パンチ。
ぼくは、つかまれ、倒され、しりもちをついた。
「ううう・・・うわあ~~」
999
くやしくて、泣きながら 走って 家に帰った。
おかあさんの 膝の上で わんわん泣く ぼく。
泣きたいきもちが なくならない ぼく。
     ・・・
あいこ先生が 誘いにきます。
「たい、おやつ(餃子) いっしょにたべよう」
「おかあさんも どうぞ」
おかあさんは、行かないとおもっていたのに 行ってしまいました。
なんでだよ! なんでだよ! なんでだよ!
     ・・・
玄関を 開けると みんながいます。
「ごめんな!」
こうたが あやまります。
なんでだよ! なんでだよ! なんでだよ!
涙がでた。
玄関の戸を しめる ぼく。
ぼくの けんかの気持ちは 終わらない。
7775
おかあさんが 持ってかえった 餃子20個。
ぼくは ぱくぱく 食べた。
もう 涙は とまった。
けんかの気持ちが 終わった。
「おかあさん おさら あらって」
     ・・・
ぼくは お皿をもって、ふたたび「あそび島」へ。
こうたは 言います。
「ごめんな!」
ちょっと てれる ぼく。
「へへへ・・・」
こんどは きっと ぼくが かつ。
3231
「ぼく」(たい)の一人称視点。絵本は「だ、である」の常体です。ぼくのイメージにぴったりの 歯切れのいい文章です。ぼくの気持ちが ストレートに伝わってきます。子どものパワーって すごいなと思います。
伊藤秀夫さんの力強い絵。アップになった「たい」の顔に 彼の感情が表現されています。悔しいきもち、泣きたいきもち、悲しいきもち、むしゃくしゃしたきもち、ムキになるきもち、照れくさいきもち、負けたくないきもち・・・。
たいのこころに 豊かな感情が 育っています。こうたとは、これからもっと深くつき合っていくことでしょう。また、喧嘩のきもちは、餃子をいっぱい食べて、なくなりました。食べるって大切なんだなと、妙に感心したところです。
      ・・・
※『 けんかの きもち 』 柴田 愛子作、伊藤 秀男絵、ポプラ社 2001年 (2017/4/16)

SHARE