ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 ともだちや 』- ともだち いちじかん ひゃくえん。

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森に住むキツネが、
「ともだちや」を始めることにしました。
「ともだちや」って、なんでしょう?

えー、ともだちやです。
ともだちは いりませんか。さびしいひとは いませんか。
ともだち いちじかん ひゃくえん。
ともだち にじかん にひゃくえん。

「ともだちやさん」。
さっそく、声がかかりました。
ウズラのおかあさんは、「あかちゃんが ねむったばかりなの・・・」。
静かにしてくださいと、たのみます。

つぎは、
ひとりで食事の クマさん。
いっしょにイチゴを食べます。
でも、イチゴを食べないキツネは 大弱り。
しくしくする おなかをおさえて にひゃくえん いただきました。
・・・
つぎは、
オオカミ。
「おい、キツネ・・・トランプの あいてをしろ」。
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トランプのあと、お代を いただこうとすると、
おだい だって!
オオカミは、目をとがらし、きばを かちかちならし言います。
「おまえは、ともだちから、かねをとるのか。それが ほんとうのともだちか」
「ほ、ほんとうのともだち?」
「そうだ、ほんとうのともだちだ。」・・・
それじゃ、
「あしたも きていいの」
「あさってもな、キツネ」

オオカミは、たからものの ミニカーをあげました。
スキップをしてかえる キツネ。

えー、ともだちは いりませんか。
さびしい ひとは いませんか。
なんじかんでも ただ。
まいにちでも ただです。

さびしがり屋のキツネは、オオカミからミニカーをもらいました。でも、キツネが得たものは、それだけではありません。自分のことを「ともだち」だと思ってくれる人物、オオカミです。それが嬉しいキツネです。「よかったね」と言ってあげたい気持ちになります。当たり前のことですが、お金で買えないもの(こと)があります。
・・・
新しい友だちを得たキツネ。それは交際の関係をひろげたキツネです。さまざまな「関係」を広げることは、ある意味「成長」だといえるでしょう。また、キツネは友だちについての認識を変えました。これもひとつの「成長」です。キツネは、いままでの彼の内と外の関係を変え、ひろげ、深めました。そして、より広く高い関係をうみだす能力を身につけたと言えます。理屈っぽいはなしになりましたが、子どもの心身の可能性をひらくものごと(目に見える世界だけでなく、目に見えない世界)との出会いをつくってあげることが保育だと思います。
・・・
※『ともだちや』 内田 麟太郎作、降矢 なな絵、偕成社、1998年  (2018/4/30)

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