タイトルの「あそこ There」って、何を意味しているのでしょうか? どこにあるのでしょうか?
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小さなかばんを持って、おんなの子が歩いています。
おんなの子が想像する「あそこ」。
「あそこ」へ行くのに、どのくらいかかるのかしら?
あした まで。
つぎの 週。
つぎの 年。
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おんなの子の想像は続きます。
「あそこ」に行ったら、おおきくなっているのかしら?
大人みたいに 話せるのかしら?
ひまわりは なに色かしら?
空は あおいのかな?
なんでも わかるようになるのかな?
おんなの子の想像は尽きません。
あそこは、ジャングルみたいかしら?
ドラゴンも いるかな。
こぐまさんも いるかな。
よりみちしても いいかな。
ひなぎくをつんでも いいかな。
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だれでも みんな あそこに いきたいの?
他の場所のほうが、いいのかなとも考えます。
でも、きょうは、行かないと言う おんなの子。
することがいっぱいあるから、あした行こうと考えます。
「あそこ」とは、おんなの子の想像の中にだけある「あそこ」です。私たちにわかることは「ここ」と「あそこ」は違う、今いるところとは違うということです。そこは彼女にとって面白そうな「あそこ」であり、憧れの世界のようです。でも、きょうは行かないと言うおんなの子。なぜなら「することが いっぱい ある」からです。
おんなの子の視点から語られていますが、これは大人向けの絵本かもしれません。おんなの子と同様に、私たちの心の中にある「あそこ」は、生きる支えのひとつのように思います。人それぞれの「あそこ」があることでしょう。
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※『あそこへ』 マリー・ルイーズ・フィッツパトリック作・絵、加島 祥造訳 フレーベル館 2012年