ふるはしかずおの絵本ブログ3

『七わのからす』- 献身的な行為が呪いを解く

グリム童話です。

カラスになった、7人の兄たちを救う、おんなのこのはなしです。

      

        ・・・

7人の男の子がいる家に、

待望の おんなのこが 産まれました。

父親の命令で、男の子たちは、洗礼の水を くみにいきました。

   

しかし、

水さしを 井戸に 落としてしまいます。  

腹をたてた 父親は、さけびました。

  

 「ぼうずどもめ、

  みんな からすでも なっちまえ!

   

すると、

息子たちは、カラスになり、

飛んで 行って しまいました。

     

 

むすめは、大きくなりました。

両親は、兄がいたことを 隠していました。

しかし、

真相を知った、おんなのこは、兄たちをさがす 旅に でます。

 

途中で 出会った

おひさまは 乱暴者、

お月さまは つめたい人でした。

 

でも、

やさしく、親切な おほしさまに 出会いました。

おほしさまは、

ひよこの足を 渡して、

これを持っていないと、ガラスの山の戸が 開かないことを教えます。

  

   

 「ガラスのやまに、

  あんたの にいさんたちが、いるのだよ

   

  

ガラスの山に ついたとき、

おんなのこは ひよこの足を なくしてしまったことに 気がつきました。

おんなのこは 自分のこゆびを きりおとし、

戸の 鍵あなに さしこみました。

   

すると、

戸が あきました。

おんなのこは、

兄たちの 最後のコップのなかに、ちいさな指輪を 入れました。

指輪に 気がついた からすが 言いました。

 

 「ああ、ここに、いもうとが いてくれたらなあ。

  そしたら ぼくたちは、すくわれるのに!

    

 

おんなのこは 飛びでました。

すると、

からすたちは、

もとの人間の姿に 戻ることが できたのでした。

       

 

パッピーエンドですが、おんなのこが自分の小指を切り落とし、戸の鍵あなにさしこむ場面に、残酷さを感じる読者もいることでしょう。しかし、語られる世界は、ことばで創造されたイメージの世界であり、形のない抽象的な世界です。ことさらにリアルな世界を想像させるのではなく、言葉の抽象性をいかして、さらっと読むのがよいように思います。

    

また、おんなのこの献身的な行為がなければ、カラスになった兄さんたちのへ呪いを解くことはできませんでした。奇跡をおこすには、献身と自己犠牲が必要だということかもしれません。

 

はなしは中世の雰囲気を宿していますが、ホフマンの絵は現代風です。はなしと絵は、異質な感じです。違和感をおぼえる読者もいることでしょう。昔ばなしであり、現代のはなしでもあることを表現している、ともいえるかもしれません。

   

       ・・・

※『七わのからす』 グリム作、フェリクス・ホフマン絵、瀬田貞二訳、福音館書店  1993年  (2024/6/4)

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