ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ライオンとねずみ 古代エジプトの物語』- 「人を思うは身を思う」

イソップの寓話より古い時代の、古代エジプトの物語「ライオンとねずみ」です。

   

      ・・・

ライオンが、狩りに でかけました。

途中で 動物たちと であいました。

みんな、ひどい目に合っていました。

 

ヒョウ

馬と ロバ

牡牛と 牝牛

クマ

ライオンは、

傷ついていたり、

角を 切られたり、

歯や爪を ぬかれたり、

木に しばりつけられたり しています。

   

 「こんなことをしたのは、だれなんだ?

    

 「それは、人間ですよ

  

 「きっと しかえし してやるぞ」

    

     

人間を 探しているうちに、

ライオンは、ネズミを 見つけました。

   

 「ころさないでください・・・

  助けてくれたら、いつか あなたの命を 助けましょう」

    

 「ふーん、いったいおまえが、

  何をしてくれる というんだい

    

 「あたしは、約束しますよ」

    

ライオンは、結局、ネズミを 放してやりました。

    

     

ライオンは 人間の罠に かかり、

しっかり 縛りつけられて しまいました。

ネズミが きました。

   

 「こんどは、あたしが、あなたの命をたすけます

    

ネズミは,

乾いた皮の ひもを かみきり、

なまの皮の ひもも かじり、

ライオンを 自由に しました。

     

   

それからというもの、

ネズミは ライオンのたてがみに 入りこみ、

ふたりは 砂漠を 歩きまわりました。

    

      ・・・

動物たちは、人間によって 角を切られたり、歯や爪をぬかれたりして苦しんでいます。ライオンは、人間の悪行を懲らしめ、しかえしをしようとします。ねずみがライオンを助けるところはイソップの寓話と同じですが、ねずみの恩返しというより、人間の悪行に目がいきます。動物の目から、人間の悪行をかたるところに、古代エジプト人の批評精神が見えます。

    

この話を再話したのは、現代のエジプト学者です。「デモティック」という象形文字の草書体のような書体で、パピルスの巻物に書かれた話を訳したものです。古代エジプトの絵を基にした絵は、その時代のエキゾチックな雰囲気を感じさせます。

    

本の見返しには、原本となる部分のデモティック文書が 採録されています。

      ・・・

※『ライオンとねずみ 古代エジプトの物語』 リーセ・マニケ文・絵、大塚勇三訳、岩波書店 1984年  (2024/6/1)

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