子どもの愛着物を描いています。ベンジーの場合は、タイトルにあるように「もうふ」です。「もうふ」はどうなるのでしょうか。ベンジーの成長を見ましょう。
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あかちゃんのときの毛布が大好きなベンジー。
いつも持ち歩いています。
絵本を読んでもらうときも、
幼稚園にも、
散髪屋さんにも、
歯医者さんにも、
寝るときも、
もうふを放しません。
ベンジーの「もうふ」のことを
おとうさんは、すこしだけわかってくれます。
おにいさんは、ぜんぜんわかってくれません。
おかあさんは、よくわかってくれています。
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毛布を持ち歩くことを理解しない人もいます。
お隣のトルーディーさんです。
「ぼろぼろじゃない。いつすてるの?」と言っています。
トルーディーさんは、最近子ねこをもらいました。よく鳴く子ねこでした。 (この子ねこが伏線です。)
ある日、トルーディーの子ねこのことが話題になりました。おとうさんとおにいさんは、子ねこの鳴き声で眠れなかったのです。その日、ベンジーはもうふのことを忘れてばかりです。
トルーディーさんと話した時も、
幼稚園が終わったあとも、
新しい靴を買った時も、
スーパーマーケットのレジでも、
もうふを忘れてしまいました。
(どうしたんでしょう。)
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トルーディーさんのところへ遊びに行くベンジー 。 毛布もいっしょに持っていきました。そして、家に帰ったベンジーは言います。
「トルーディーのこねこ、もうなかなくなったよ」
( なぜだか、もうおわかりですね。 )
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子ねこは、ベンジーの毛布にくるまって幸せそうです。
「ぼくのもうふ あげたの。・・・ぼくは、もう おおきいんだもの」
ベンジーは誇らしく言います。
子どもの愛着物を描いた絵本には、ジョン・バーニンガムの『 もうふ 』(谷川俊太郎訳、冨山房)やケビン・ヘンクスの『 いつも いっしょ 』(金原瑞人訳、あすなろ書房)があります。どちらもこのブログで紹介しました。
バーニンガムの『 もうふ 』を紹介したときに書いた、愛着物についての文章を引用します。「子どもは、親への依存と愛着を感じつつも、現在の状況から一歩踏みだそうとしています。自立するこころと依存するこころ。「愛着物」は、こうした内面の対立をやわらげ、子どもの能動性をたすけるもの。それは、子どもにとって、わらい、なぐさめ、いかり、はげまし、共感してくれるものなのです」。
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※『ベンジーのもうふ』 マイラ・ベリー・ブラウン作、ドロシー・マリノ絵、まさきるりこ訳、あすなろ書房、2010年 (2022/4/10)