5歳のピーターは友達を見つけに学校に行こうとします。 たくさんの仲間を見つけますが、それは学校の友達ではありませんでした。
・・・
森の中に住むピーター。
ねこ、
いぬ、
ひつじたち、
あひるたちが友達です。
でも、一緒に遊べる子どもがいません。
・・・
つぎの日の朝はやく、
ピーターは、友達を探しに、村の学校に行くことにしました。
途中、
誰かが見ているような気がします。
でも、なにもいません。
(人物も知らない、読者も知りません。)
そして、とうとう森を出て
村につきました。
学校は、目の前にありました。
いっしょに遊ぶ友達を見つけようと思ったのに、
誰もいないようです。
おじいさんが、学校は9月に始まることを教えくれました。
ピーターはとおい道を一人で帰ります。
かわいそうなピーター。
帰り道、
ちいさなうさぎに会いました。
「やっと、ぼく、ともだちを みつけたかな」
でも、うさぎは、いなくなってしまいました。
・・・
小川のところで、
あらいぐまに会いました。
「やっと、ぼく、ともだちを みつけたかな」
あらいぐまも、いなくなってしまいました。
こんどは、きつねのこに会いますが、
やはり、いなくなってしまいました。
・・・
家の門まで帰ると、
ピーターのねこ、いぬ、ひつじ、あひるが待っています。みんな、ピーターとあそぼうとしています。
いぬに、木の枝、
ねこに、ボール、
ひつじたちと、おにごっこ、
あひるたちとは、ダンスをして遊びます。
・・・
ピーターは、道で出会った、
うさぎ、
きつね、
あらいぐまがやって来るのを見ました。
「ピーター!」
かあさんが呼びます。
ピーターは、
「ぼく、じぶんで たくさん ともだち みつけたよ」と言いました。
でも、村の学校へ行ったことは、かあさんに話しませんでした。
・・・
要約しましたが、ほんとうは長いはなしです。「行きて帰る」はなしの中に、繰り返しが織り込まれています。読者は、遠い学校にいくピーターに同化して彼の冒険を読んでいきます。ストーリーはシンプルです。
また、語り手はピーターのこころを語ります。そして、「ピーターは、とても つよい こでした。 ですから、ないたりは しませんでした」とか「かわいそうな ピーター」と言うように説明したり、自分の気持ちを語っています。長いはなしでしたが、読者は飽きずに聞くことができるでしょう。
バーバラ・クーニーの描くピーターと動物たちも魅力的です。ピーターの心の動きがよく分かります。ピーターのような冒険は、形は違っているとしても、誰にもあったことでしょう。「ねがいごとは じぶんで かなえるのよ」( かあさんの言葉です)。
・・・
※『ピーターのとおいみち』 リー・キングマン作、バーバラ・クーニー絵、三木卓訳、講談社 1997年(初版は1953年)
【 追 記 】
ピーターの心を表現した比喩表現が面白かったので引用してみます。
・ピーターは、たまごの からの なかの ひなのよう。さびしかったのです。
・うみの まんなかの こじまのように、ひとりぼっちに なった きもちでした。
・こうらに もぐりこんだ かめに なったように、さびしいと おもいました。
・しっぽの ない いぬに なったように、さびしいと おもいました。
・そらの まんなかに ぽつんと いる たいようのように、さびしいと おもいました。
・いきさきを もたない そらの くものように、さびしいと おもいました。
ピーターが学校へ行く道と帰り道に、彼のこころを表現する比喩がふんだんに使われています。ピーターが家に帰り、どうぶつたち遊ぶ場面にはありません。比喩で表現されたような「さびしい思い」はもうありません。 (2021/7/18)