インドのジャングルに、年老いたトラが住んでいました。
骨と皮ばかりのトラ。
サルにも、馬鹿にされています。
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ある日、
宮殿の庭に、トラの毛皮が干されていました。
トラは、ひらめきました。
自分が、トラの毛皮になること。
そのアイディアは、まんまと成功し、
トラは広間に敷かれました。
本物のトラが絨毯になっているなんて、誰も気がつきません。
夕飯のあと、王さまたちが出て行くと、
トラは残ったご馳走を食べ、紅茶を飲みました。
でも、人がいる時は、ぴくりとも動きませんでした。
でも、心配がありました。
前よりふっくらして、
毛並みもよくなってきたのです。(笑)
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召使は、トラの絨毯が前より重くなったと思います。
もう、ばれるのは時間の問題です。
そのとき、
怪しいもの音。
三人のどろぼうです。
王さまが、広間にはいってきます。
どろぼうは、王さまをなぐりつけ、刀を王さまの胸につき当てようとします。
その時、
トラは、
立ち上がり、
大声で吠え、
どろぼうにおどりかかりました。
一件落着、大団円。
トラは、ずっと宮殿で暮らすことになりました。
プールで水浴びをして、
王さまたちとピクニック。
子どもはトラと遊び、お后さまの大のお気に入り。
じぶんのお皿で、ごはんを食べ、
(自分のお皿というところが、笑えます)
インドで一番おいしい紅茶を飲み、
ごろりと広間に寝そべるのです。
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本物のトラが絨毯になるなんて、その発想が笑えます。美味しいものたくさん食べて太ってしまい、毛並みが良くなるところも笑えます。でも、トラのこの事態の中には、ある真実が隠されているようです。人物(トラ)の望みがかなうプロセスが、人物の本性を露見させるという事態です。なんだか笑えないことです。
ジェラルド・ローズ(1935生)の絵本は、以前『猫と悪魔』(ジェイムズ・ジョイス作、丸谷才一訳、小学館)を紹介したことがあります。文豪ジョイス(1882年-1941年)が孫に書きおくったおはなしです。丸谷才一さんの「歴史的假名づかひ」による翻訳です。
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※『 トラのじゅうたんに なりたかったトラ 』 ジェラルド・ローズ作・絵、ふしみみさを訳、岩波書店 2011年 (2019/10/1)