
『トラさん、あばれる』は、自分を見つめなおそうと言っているようです。
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絵本の中のどうぶつたちは、みんな直立二足歩行をしています。
行儀のよい上品な社会です。
みんな、いまのままでいいと思っています。
(でも、堅苦しい。窮屈。)
その中に、
はじけたい、
さわぎたい、
あばれたい、
と思っているトラがいます。
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そこで、トラはやってみました。
四足で歩くことを。
とてもいい気分です。
あばれてもみました。
ワオオ!
友達は、トラがそのようなことをするのか、わけがわかりません。
暴れたいなら、森へいったら。
トラは、
それはいいかんがえだ! と思います。
森の中で、
思いっきり暴れるトラ。
ワオオ!
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でも、ひとりぼっち。
トラは、友達に会いたくなりました。
街が懐かしく、
家に帰りたくなりました。
もどってみると、
みんなの様子が前とちがっています。
みんなは、四足で走り、洋服を脱ぎすてているのです。
みんな、気持ちよさそうです。

「自然に帰れ」。
社会の因襲から脱して、人間の内なる自然を回復しなければならないというのはフランスの思想家・ルソー(1712 -17 78) の根本思想でした。トラさんのような行動や生き方にもあこがれますが、いまの社会の中で、そのようにできる人がどれだけいるでしょうか。現実には難かしいことだと思いますが、自分とは何かを見つけようという問いかけがあります。
「想定される読者」は、大人のように思われます。子どもは、ある意味、すでに「四足で走り洋服を脱ぎすてている」ような自然児です。
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※『トラさん、あばれる』 ピーター・ブラウン作、青山 南訳、光村教育図書 2014年 (2021/6/27 )