ジローは、ぼくが拾った犬。
ぼくとジローは、いつもいっしょに眠ります。
そうした2人が入れ替わってしまうおはなしです。
ぼくの視点から書かれています。
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ぼくとおとうさんは、ジローの家をつくります。
その夜、
はじめて離れ離れで寝ることになりました。
「ウォーン」「ウォーン」と泣いているジロー。
ぼくは、
庭にあるジローの家でいっしょに眠ります。
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朝になると、
ぼくはびっくり。
ジローが、ぼくの朝ごはんを食べています。
ぼくが、部屋に上がると
おとうさんが、ぼくに向かって
「こら ジロー!」
ええっ。
ぼくが 犬のジローなの?
(ふたりは入れ替わってしまいました。)
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でも、宿題はなし。妹と遊ばなくてもいい ぼく。
犬のジローは、家で肩たたきをしています。
おとうさんとプロレスをしています。
「なかなかやるじゃん」とぼく。
ニタニタするジロー。
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ジローの家で寝るぼく。
ジローがやって来ます。
すごくすごくうれしい ぼくです。
次の朝、
すべて 元通りになりました。
ぼくは ぼくに もどったんだ。
でも、いまも、ぼくはジローとずっといっしょに寝ています。
『転校生』(大林宣彦監督)という映画があります。
山中恒の児童文学「おれがあいつで あいつがおれで」が原作の映画です。転校生の一美(小林聡美)と一夫(尾美としのり)が、誤って石段を落ちてしまい、2人の身体は入れ替わってしまいました。一美と一夫はお互いの体に戸惑い嫌悪感を覚えながらも、やがて異性として相手への理解を深めていくという映画です。
ジローとぼくも同様です。相手の身になって、相手の心を理解します。一美と一夫、ジローとぼくのようなことは現実には起こりませんが、虚構の世界ではこのようなことが可能です。
虚構の世界は現実を逆照射します。人物が入かわることで、日常とは違った目からものごとを見ます。そのことで新たな世界が見えてきます。
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※『ジローとぼく』 大島妙子作・絵、偕成社 1999年 (2019/11/22)