ふるはしかずおの絵本ブログ3

『エイミ-とルイス』- 子どもの読者と大人の読者

幼いエイミーとルイス(表紙のふたり)に起きたできごとです。素直な2人の行動が大人のこころを打ちます。

 

     ・・・

エイミーとルイスは いつもいっしょ。

高い塔をたてたり、

深い穴をほったり、

空の雲を不思議な動物に見立てたりして遊んでいます。

     ・・・

砂場にいるエイミーが、ブランコのルイスを呼びます。特別な言葉で。

 クーーーーイ、ルーーーーイ

 

クロゼットにいるルイスも、子供部屋のエイミーを家じゅうに響く声で呼びます。

 クーーーーイ、エーーーーイ

ある日、エイミー一家は、引っ越すことになりました

地球の裏側くらい、遠いところに。

わかれた後、

ルイスは、

塔をたてることも、

穴をほることも、

雲を見上げることも、つまらなくなりました。大きな声で呼ぶこともありません。

     ・・・

「ものすごく 大きな声で呼んだら、エイミーに届くかな」とルイスが言います。

ママもパパも「届かない」と言いますが、

おばあちゃんは「ためしてごらん」と励ましてくれました。

ルイスは、大きな声で

 クーーーーイ、エーーーーイ。

 

空を見上げると、

雲が、たつのおとしごになり、

大きな強いりゅう(龍)へと変わっていきます。

海のずっと向こうにいるエイミー。

エイミーは目覚め朝ごはんを食べにいきます。

 

 すてきな ゆめをみたわ。

 エイミーは つぶやきました。

 

 ルイスのゆめ。

 ルイスが わたしをよんでる ゆめ。

 

      ・・・

エイミーとルイス。ふたりの子どもが主人公ですが、大人にも読んでほしい絵本でした。また、子どもと大人では読後感は違うのではないかと思いました。 子どもの読者は、エイミーとルイスに同化して読んでいくでしょう。同化しないまでもエイミーとルイスに親近感を抱くことでしょう。

 

大人の読者はどうでしょうか。ふたりに同化して読むことはないでしょう。ふたりに親近感を抱くとしても、ふたりに起こった出来度を外から見るようにして、つまりふたりを異化しながら読んでいくのではないかと思います。そして、ふたりの別れとルイスの叫び声に、やるせなく切ない感情がわいて来るのではないかと思います。子どもの読者とは違った体験をするでしょう。

      ・・・

※『エイミ-とルイス』リビー・グリーソン文、フレア・ブラックウッド絵、角田光代訳、岩崎書店 2011年

 

【 追 記 】

大きな声で呼びあうエイミーとルイスの声の比喩表現を比べてみました。仲良くあそんでいた時とエイミーが引っ越した時です。

「こうえんじゅうに ひびくほどの」「いえじゅうに ひびくほどの」「へいのむこうに とどくような おおきなこえ」です。 エイミーとルイスの楽しい声の表現です。

        ↓

エイミーが引っ越しをした後、ルイスがエイミーを呼ぶ声はこうです。

こうえんじゅうに ひびくような とおりというとおりに ひびくような まちじゅうの どんなちいさな ろじにも ひびくような おおきな おおきなこえ」と表現されています。同じようにも聞こえますが、その声は「まちじゅうの どんなちいさな ろじにも ひびくような」大きい声です。大げさな比喩かもしれませんが、それだけにルイスの呼び声に一層切ないものを感じます。

(2021/10/30)

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