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幼いエイミーとルイス(表紙のふたり)に起きたできごとです。素直な2人の行動が大人のこころを打ちます。
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エイミーとルイスは いつもいっしょ。
高い塔をたてたり、
深い穴をほったり、
空の雲を不思議な動物に見立てたりして遊んでいます。
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砂場にいるエイミーが、ブランコのルイスを呼びます。特別な言葉で。
クーーーーイ、ルーーーーイ。
クロゼットにいるルイスも、子供部屋のエイミーを家じゅうに響く声で呼びます。
クーーーーイ、エーーーーイ。
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ある日、エイミー一家は、引っ越すことになりました。
地球の裏側くらい、遠いところに。
わかれた後、
ルイスは、
塔をたてることも、
穴をほることも、
雲を見上げることも、つまらなくなりました。大きな声で呼ぶこともありません。
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「ものすごく 大きな声で呼んだら、エイミーに届くかな」とルイスが言います。
ママもパパも「届かない」と言いますが、
おばあちゃんは「ためしてごらん」と励ましてくれました。
ルイスは、大きな声で
クーーーーイ、エーーーーイ。
空を見上げると、
雲が、たつのおとしごになり、
大きな強いりゅう(龍)へと変わっていきます。
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海のずっと向こうにいるエイミー。
エイミーは目覚め朝ごはんを食べにいきます。
すてきな ゆめをみたわ。
エイミーは つぶやきました。
ルイスのゆめ。
ルイスが わたしをよんでる ゆめ。
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エイミーとルイス。ふたりの子どもが主人公ですが、大人にも読んでほしい絵本でした。また、子どもと大人では読後感は違うのではないかと思いました。 子どもの読者は、エイミーとルイスに同化して読んでいくでしょう。同化しないまでもエイミーとルイスに親近感を抱くことでしょう。
大人の読者はどうでしょうか。ふたりに同化して読むことはないでしょう。ふたりに親近感を抱くとしても、ふたりに起こった出来度を外から見るようにして、つまりふたりを異化しながら読んでいくのではないかと思います。そして、ふたりの別れとルイスの叫び声に、やるせなく切ない感情がわいて来るのではないかと思います。子どもの読者とは違った体験をするでしょう。
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※『エイミ-とルイス』リビー・グリーソン文、フレア・ブラックウッド絵、角田光代訳、岩崎書店 2011年
【 追 記 】
大きな声で呼びあうエイミーとルイスの声の比喩表現を比べてみました。仲良くあそんでいた時とエイミーが引っ越した時です。
「こうえんじゅうに ひびくほどの」「いえじゅうに ひびくほどの」「へいのむこうに とどくような おおきなこえ」です。 エイミーとルイスの楽しい声の表現です。
↓
エイミーが引っ越しをした後、ルイスがエイミーを呼ぶ声はこうです。
「こうえんじゅうに ひびくような とおりというとおりに ひびくような まちじゅうの どんなちいさな ろじにも ひびくような おおきな おおきなこえ」と表現されています。同じようにも聞こえますが、その声は「まちじゅうの どんなちいさな ろじにも ひびくような」大きい声です。大げさな比喩かもしれませんが、それだけにルイスの呼び声に一層切ないものを感じます。
(2021/10/30)