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チェコの絵本です。
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冬
雪の庭を見たマルチンは、
「あそこに おもしろい ぼうが たってるよ」と指さしました。
「あれは りんごのきなのよ」とおかあさんが教えてくれました。
「わん! わん! りんごのきは きずだらけだよ!」とこいぬが吠えます。
おとうさんは、
うさぎに かじられないように、
りんごのきに 金網をまきつけました。
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春
りんごのきに 花がいっぱい咲きました。
おとうさんは、りんごのきに くすりを撒きました。
![](https://ehon.furuhashi-kazuo.com/wordpress/wp-content/uploads/2019/10/りんごのき1-1024x507.jpg)
夏
りんごのきは、2つの実をつけました。
マルチンは、りんごのきに 水をまきました。
のどが乾いていた りんごのきは、とても喜びました。
ひどい風が吹きました。
稲光がひかり、
雷が鳴ります。
風は、りんごをひとつ もぎ取ってしまいました。
「ひどいや! ひどいや!」
風は、森へ逃げて行ってしまいました。
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ある日
りんごのきの葉っぱは 黄色になっています。
マルチンは、おかあさんに聞きました。
「もう りんごを とっても いいの?」
「いいですとも」
「ら、ら、ら、ら!」
マルチンは、りんごをもって 家へ入りました
きっと おやつに たべるんでしょうね!
![](https://ehon.furuhashi-kazuo.com/wordpress/wp-content/uploads/2019/10/りんごのき2-1024x506.jpg)
絵本に登場するどうぶつたちは人間のようです。
ねこ、こいぬ、はりねずみ、ひなぎく、すずめ、にわとりはおしゃべりをします。「あかくなったら たべようっと」と言ったのは、はりねずみ でした。また、りんごのきは話はしませんが、顔が描かれています。のどが乾いていたり、だまったままだったり、喜んだりしています。木を吹き飛ばそうとする風には顔が描かれています。りんごは、木から落ちて草の中に隠れたりします。
これらは擬人法ですが、みんな、マルチンと同じ世界に住む人物たちです。語り手も、マルチンを見守りながら、子どもの目線にたって語っています。
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正方形(18センチ)の絵本です。各ページの文章も同じ程度の長さですから、絵本をめくる時間も一定になってきます。形と時間の安定感があります。また、季節の変化、視点の移動、目線の変化もあります。絵を見ますと、りんごのきは3つの地点から見られていることがわかります。マルチンと同じ年頃の読者を意識した様々な仕掛けが見られる絵本です。
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※『りんごのき』エドワルド・ペチシカ文、ヘレナ・ズマトリーコバー絵、内田莉莎子訳、福音館書店 1972年 ( 2020/4/9 )