少女ミレットと綱渡り師ベリーニの交流を描きます。
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舞台は、100年ほど前の、パリ。
ミレットの母が営む宿屋に
引退した綱渡り師・べリーニがやってきました。
次の日、
べリーニが、
宿屋の中庭で綱渡りを始めると、
ミレットは、思い切って声をかけました。
「べリーニさん、わたしにも、それをおしえてください」
彼は断りました。
「いったんおぼえてしまうと、足が地面についていられなくなるから」
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でも、諦めきれない、ミレット。
一人で練習をはじめます。
すると、
べリーニは言います。
「きみには、才能があるようだね」。
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べリーニは、
ナイアガラの滝をわたり、
バルセロナの闘牛場で、
綱の上で大砲をうちならした伝説の男でした。
「鉄の心臓のもちぬし」でした。
しかし、
一度恐怖を味わったべリーニは、恐怖心を克服できずにいました。でも、ベリーニはミレットに出会ったことで、綱渡りともう一度向き合う決心をしました。
街の広場でつなわたりをするベリーニに、
興行師は叫びます。
「あの神業のベリーニがかえってきました!」
でも、
なにかがおかしい。
ミレットは、はじかれたように階段をのぼり、屋根の上にとびだし、綱の上にいきました。
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ベリーニは、
微笑み、ミレットに向かって歩きだしました。
ミレットも、
空を渡りはじめました。
「ブラーヴォ! ブラーヴォ!」
人びとは湧き上がります。
でも、ふたりはといえば、つなを渡りきることだけをかんがえていました。
19世紀末のパリ。個性的な人物たち。ミレット、神業の綱渡り師・ベリーニ、ミレットの母で宿屋を営むマダム・ガレット、そこに集う世界中の旅芸人たち、サーカス団の興行師……
ミレットのベリーニへのあこがれと揺れ動く感情、ベリーニの苦悩と決心、緊張感あふれる綱渡りのシーン。そして結末の喜びと感動。ドラマチックなストーリーです。
絵本を読んでいますと、映画のように動く映像が浮かびます。ミレットとベリーニが出会い綱渡りを成功させるまでの時間のなかに、 絵本のようにベリーニの過去の回想が挟まれる構成にしたら面白いと思いました。1993年コルデコット賞受賞作品です。
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※『つなのうえのミレット』 エミリー・アーノルド・マッカリー作・絵、津森優子訳、文渓堂 2013年 (2021/5/4)