戦争を考える絵本です。
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九州の南の海辺にある小さな小学校。
昭和20年の春、
毎日のように、日の丸をつけた飛行機が飛ぶようになった。
(特攻機だと分かります)
子どもたちは、バンザイを叫びます。
飛行機は、
翼をふって 海のむこうへ飛び去った。
それは,最期のサヨナラをしていることを先生は知っていた。
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子どもたちは、
手紙や絵を航空隊に送った。
「こんどは、もっと大きく つばさをふってください」。
そして、子どもたちは、すみれの花を送ることにした。
すると、手紙がきた。
すみれの花をたくさんありがとう。・・・
ぼくは小さいとき、よく すみれの花で、すもうをしました。・・・
〈すもうとり草〉とよんでいました。
すみれの花をからませて、引っぱりっこをすると、
どちらかの花が、ちぎれます。
ちぎれたほうが、まけです。・・・
毛布の中を 花だらけにしたまま ねてしまいました、
かすかに、いい匂いがしました。・・・
いつまでもお元気で。サヨーナラ。
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先生は、子どもの前で泣いた。
そして、特攻機のことを話した。
子どもたちは、その日からすみれの花束を送りつづけた。いく機の特攻機が、すみれを持って南の海に散っていったことだろう。
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戦争がおわって、ちいさな無人島に、すみれの花が、いちめんに咲くようになった。海辺の人たちは、名前のなかったその島のことを、いまも〈すみれ島〉とよんでいる。
語り手はたんたんと語りますが、情感あふれる文章です。戦争の悲しみ、悲惨、残酷さを感じます。若者の手紙がこころを打ちます。涙がながれます。この若者にも家族があり、友があり、生きてきた過去があり、未来がありました。手紙を書いた彼は、どのような最期をむかえたのでしょうか。 戦争は、彼のすべてを根こそぎ奪いさりました。平和の尊さ、ここいることのありがたさを思います。戦争で亡くなった方々を思い、平和をつぎに継がなくてはならないと思います。
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※『すみれ島』 今西祐行作、松永禎郎絵、偕成社 1991年