ふるはしかずおの絵本ブログ3

『すみれ島』-「いつまでもお元気で。サヨーナラ。」

戦争を考える絵本です。

      ・・・

九州の南の海辺にある小さな小学校。

昭和20年の春、

毎日のように、日の丸をつけた飛行機が飛ぶようになった。

 (特攻機だと分かります)

子どもたちは、バンザイを叫びます。

     

飛行機は、

翼をふって 海のむこうへ飛び去った。

それは,最期のサヨナラをしていることを先生は知っていた。

      ・・・

子どもたちは、

手紙や絵を航空隊に送った。

「こんどは、もっと大きく つばさをふってください」。

そして、子どもたちは、すみれの花を送ることにした。

    

すると、手紙がきた。

     

 すみれの花をたくさんありがとう。・・・

 ぼくは小さいとき、よく すみれの花で、すもうをしました。・・・

 〈すもうとり草〉とよんでいました。

 すみれの花をからませて、引っぱりっこをすると、

 どちらかの花が、ちぎれます。

 ちぎれたほうが、まけです。・・・

       

 毛布の中を 花だらけにしたまま ねてしまいました、

 かすかに、いい匂いがしました。・・・

 

 いつまでもお元気で。サヨーナラ。

     ・・・

先生は、子どもの前で泣いた。

そして、特攻機のことを話した。

子どもたちは、その日からすみれの花束を送りつづけた。いく機の特攻機が、すみれを持って南の海に散っていったことだろう。

      ・・・

戦争がおわって、ちいさな無人島に、すみれの花が、いちめんに咲くようになった。海辺の人たちは、名前のなかったその島のことを、いまも〈すみれ島〉とよんでいる。 

語り手はたんたんと語りますが、情感あふれる文章です。戦争の悲しみ、悲惨、残酷さを感じます。若者の手紙がこころを打ちます。涙がながれます。この若者にも家族があり、友があり、生きてきた過去があり、未来がありました。手紙を書いた彼は、どのような最期をむかえたのでしょうか。 戦争は、彼のすべてを根こそぎ奪いさりました。平和の尊さ、ここいることのありがたさを思います。戦争で亡くなった方々を思い、平和をつぎに継がなくてはならないと思います。     

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※『すみれ島』 今西祐行作、松永禎郎絵、偕成社 1991年

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