ふるはしかずおの絵本ブログ3

『しんせつなともだち』- 他者を思いやるこころと行動

寒い冬が舞台ですが、食べものを分かち合う心温まるはなしです。

      ・・・

雪が、

降り積もり、

食べものがない山のなか、

こうさぎが 食べ物を探しにでかけます。

かぶを ふたつ 見つけます。

ひとつだけ食べて、ひとつは残しました。

 (どうして?)

 (こうさぎさんは こう考えたの。)

「ろばさんは きっと たべものが ないでしょう。このかぶを もっていって あげましょう」

こうさぎは ろばの家に かぶをおいてきました。

       ・・・

ろばは、

さつまいもを 見つけて 家に帰りました。

かぶが 置いてあるので、不思議に思いましたが、

「やぎさんは きっと たべものが ないでしょう。このかぶを もっていって あげましょう」

こやぎは留守でしたが、

ろばは、かぶを置いてきました。

こやぎは、

はくさいを 見つけて 家に帰りました。

かぶを見て、不思議に思いましたが、

「しかさんは きっと たべものが ないでしょう。このかぶを もっていって あげましょう」

こじかは留守でした。

しかし、こやぎは、かぶをおいてきました。

      ・・・

4回目です。

こんどは、こじかの番です。結末は、もうおわかりですね。

 (わかります)

      ・・・

こじかは、

青菜を 見つけて 家に帰りました。

かぶを見て、不思議に思いましたが、

「うさぎさんは きっと たべものが ないでしょう。このかぶを もっていって あげましょう」

うさぎは、おなかがいっぱいで 寝ていましした。

こやぎは、かぶをそっと置いて 帰りました。

      ・・・

こうさぎが 目をさますと、びっくり。

でも、すぐに分かりました。

「ともだちが わざわざ もってきてくれたんだな」

こうさぎ、ろば、こやぎ、こじかは、みんな食べものを探しに、雪の中を出かけます。食べるものに困っています。かれらにとって、かぶは大切なご馳走だったことでしょう。でも、食べるのはやめて、自分よりも困っている人物に持って行ってあげます。どうぶつたちの優しい気持ちです。また、人間らしい美しいこころです。言うまでもありませんが、絵本の中の人物がどうぶつであったとしても、それは人間のこころと行動の喩えです。

   

子どもが出合ってほしい絵本、また子どもに出合わせたい絵本です。

また、語り手の言葉は、おはなしの中の想定された聞き手に向けられています。この聞き手を「母子」に「想定」して、( )の中に登場してもらいました。

      ・・・

※『しんせつなともだち』方 軼羣作、君島久子訳、村山知義絵、福音館書店、1965年  (2019/1/4)

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