まわりの音に耳をすます、こいぬの マフィン。しずかな音さがしの絵本です。
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こいぬの マフィンは、目がさめた。
何かの音で。
とても静かな音で。
なんだろう?
ありが はってる 音?
蜂が びっくりしてる 音?
つまさきだちの ゾウが 階段を下りてくる 音?
バターが とけてゆくのかな?
青い花が 咲きかけている 音かな?
いいや・・・
きりぎりすが くしゃみを しているのかな?
ちがう・・・
とっても しずかな おと。
ゼリーを たべてる ような
こねこが ミルクを なめてる ような
ことりの はねが 空を きるような・・・
空っぽの いすの ような
くうきの ような・・・
それは―
のぼってくる おひさま
朝の そよかぜ
ことりたちの 身じろぎ
ときのこえを あげようとする おんどり
それは あたらしい いちにち。
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しずかな朝の情景、あたらしい一日のはじまりです。
しずかな音のなかには、耳に聞こえない「ねずみか ためいき ついてる」「ちょうが はねを ひろげる」「おひさまに のぼっていく あさつゆ」「うれていく いちじく」の音・・・があります。
タイトルの「しずかで にぎやかな」とは、「ゆっくり 急げ」のような、オクシモロン(撞着語法)ですが、しずかでなにも聞こえないよう世界に、たくさんの音があります。音をきく感覚を刺激する絵本です。
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※『しずかで にぎやかなほん』 マーガレット・ワイズ・ブラウン作、レナード・ワイスガード絵、谷川俊太郎訳、童話館出版 1996年 (2023/10/4)