「くじらさんのー たーめなら えんやこーら」と頑張る、
ぺんぎん、
あざらし、
とど、
しろくまたち。
(でも、何をするのでしょうか?)
・・・
氷山の上に、
たくさんの ぺんぎん、
あざらし、とど、しろくまが乗っています。
まんなかに くじらまで どでーんと。
・・・
ぺんぎんとあざらしが海に飛びこみました。( 下の絵 )
「くじらさんのーたーめなら」
「えんやこーら」
ざぶーん。
すると、氷山が浮きあがります。
つぎは、とどが飛びこみます。
「くじらさんのーたーめなら」
「えんやこーら」
ずぼーん。
すると、氷山はさらに浮きあがります。
こんどは、しろくま。
「くじらさんのーたーめなら」
「えんやこーら」
どぶーん。
・・・
すると、氷山はさらに浮きあがり、残ったのは
くじらだけ。
くじらは、海にダイブします。
だぶーん
くじらは、これがしたかったのです。
「みなさん ありがとう」
・・・
でも、
ぺんぎん、
あざらし、
とど、
しろくま、
くじらは、
氷山にどのようにして登ったのでしょうか。
( たしかに。どのようにして?)
それは、海の下で「くじらさんのー たーめなら えんやこーら」と たこさんが、氷山を引っぱっていたからでした。
( たこが氷山の下にいるわけないよ!)
(おはなしですから)
「くじらさんのー たーめなら えんやこーら」 と言う、タイトルが仕掛けになっています。タイトルは、テーマを示すだけでなく、読者への仕掛を含んでいます。
1頭のくじらのために、ぺんぎん、あざらし、とど、しろくま、たこたちは「くじらさんのー たーめなら えんやこーら」と頑張りました。何のためだったのでしょうか。それは氷山の上から飛び込みたいという、くじらの願いを実現するためでした。遊びです。でも、バカバカしいことのようにも見えます。
ひとりのために、「 ~ の ーたーめなら えんやこーら」とみんなが同じようなことをすることが、わたしたちの世界にもあるのでしょうか? きっとあることでしょう。ええ、あります。 ナンセンスな絵本ですが、ユーモアだけでなく、人物や社会に対する風刺やアイロニーがあるように思います。
・・・
※『くじらさんのーたーめなら えんやこーら』 内田麟太郎作、山村浩二絵、鈴木出版 2015年 (2021/5/9)