スリランカのお話です。登場人物は、くいしんぼうのきつねのホイティ。元気のいいアンゴウさん、マンゴウさん、ランゴウさんという3人のおかみさんです。
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ある晩、
ホイティは、人間に変装してやってきました。
「たびのものです・・・おなかがすいています。なにかひとくち、たべさせてくださいませんか」
「まあ、おきのどくに。」
アンゴウさんは、ごはん、カレー、さかなのフライ、ヨーグルトでもてなしました、
「ごちそうさまさまでございました。ありがとうございますでございます。」
(ホイティの教養が見えます)
アンゴウさんは、きつねのしっぽに 気がつきました。
でも、気づかないふりをしました。
ホイティは、うたいます。
ホイティ、トイティ このおれさまは♪
なンとまあ あたまがいいんだろ
ばかなアンゴウはだまされて♪
きつねとしらず このおれさまに
ごちそうだして もてなした
ホイティ、トイティ、ホイティティ!
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味をしめたホイティ。
マンゴウさん、ランゴウさんにもごちそうになります。
(ホイティのうたがくりかえされます。)
でも、おかみさんたちは、きつねであることは、既にお見通しです。
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おかみさんたちは、 森で、ホイティが自分たちを馬鹿にしていることを聞きました。みんなは、ホイティを懲らしめることにしました。
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その方法は?
物干しづなに、ピンクの花嫁衣装をかけておきます。その晩、ホイティは、思った通り、花嫁衣装を着てあらわれました。でも、ホイティは、その服が花嫁衣装であることを知りません。アンゴウさん、マンゴウさん、ランゴウさんは、うたいます。はやしたてます。
はなよめさん はなよめさん♪
しっぽはやした はなよめさん
おひげはやした はなよめさん
はなよめいしょうが おにあいね♪
でも
はなむこさんは どうしたの? はなむこさんは どこにいるの?
だまされ、からかわれたホイティは、 森のすみかに逃げかえりました。
「おれとしたことが、はなよめいしょうをきせられるとはなあ」
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ホイティとおかみさんたちとのやりとりをユーモラスに描いています。その効果は「人物と読者の関係」にあります。
1.人物(ホイティ)は知らないが、 読者は知っている
2.人物(おかみさん)は知っている、読者も知っている
ホイティは、おかみさんの企みを知りませんが、読者は知っています。読者はつねに成り行きを知りうる立場にいます。高みに立っておはなしを聞くことができますから、ホイティのしていることが可笑しく感じられてきます。
リズミカルでユーモアのある歌もおはなしの魅力です。「ホイティ、トイティ、ホイティティ!」と口ずさみたくなるでしょう。
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※『きつねのホイティ』 シビル・ウェッタシンハ作・絵、 松岡享子訳 福音館書店 1994年 (2022/2/6)