
ライバル同士のきつねとねこのパン屋さん。
相手を認めあうところから、あたらしいことが始まりました。
きつねの ぱんやさんの 夢は
世界一 おいしいぱんを 作ってみたい、でした
ある日、
お星さまが やってきて 言いました
「きつねさん、おたくのぱんも おいしいけど、
ねこの ぱんやさんの ぱんには
かなわない みたいだねえ」
きつねは
紳士に化けて、ねこのぱんやに いきました
そして、きつねは 言いました
「ねこさん。おたくのぱんも おいしいけど、
きつねの ぱんやさんの ぱんには
かなわないようですねえ」
そうは 言ったものの
きつねは
ねこのぱんやの ぱんのほうが ずっとおいしい、気がしました
きつねは 家にかえると、わあ わあと なきだしました
こんどは
ねこの紳士が
きつねの ぱんやさんに 来て 言いました
「おいしいぱんだ。
しかし やっばり ねこさんの ぱんには
かなわないようだ にゃあ」
しかし、
ねこのぱんやも
きつねの ぱんのほうが ずっと おいしい気がしたのです
ねこも 自分のお店で わあ わあと なきつづけました

ねこは お医者さんから
〈くよくよびょう〉と〈めそめそびょう〉ですと言われ
入院をすることに なりました
ところが
病院には、もう きつねのぱんやさんが 入院しています
ふたりは
おたがいの ぱんのよさを認め、 仲良しになりました
そして
ふたりは、「きつねこぱんてん」をだし
いっしょに はたらくことに しました
おみせは 大繁盛です
そらでは お星さまが にこにこ 笑っています
・・・
きつねもねこも、自分のパンがいちばん美味しいと思っていましたが、ライバルの作ったパンを食べると、自信をなくしてしまいました。自分の作ったパンに自信がもてなくなった、ふたりです。
でも、お互いに、相手のパンを認める力がありました。さいごに、ふたりで「きつねこぱんてん」を出すというハッピーエンドです。この結末をみちびいたのは、相手のことを素直に認め合うことにありました。
笑いを誘うセリフがあります。
自信をなくした、きつねが言います。「いなかへ かえって おとうふやさんでも やろうかなあ」。
自信をなくした、ねこが言います。「のらねこにでも なって いきていくより しかたがないなあ」。
きつねとねこの表情がとてもおかしい。長新太さんの絵も、ユーモアの味をくわえています。
・・・
※『きつねのぱんとねこのぱん』 小沢正作、長新太絵、世界文化社 2021年 (2025/6/14)