タイトルは『かたあしだちょうのエルフ』。
表紙の絵は両足があるのに。
片足?
表紙の絵と題名が、読者への仕掛けになっています。
読みかたりを始める前に「どうして片足になったのかな?」という言葉がけをするとよいと思います。
・・・
わかくて、
つよくて、
すばらしく大きな、
だちょうのエルフ。
動物の子どもたちの人気者です。
ところが、
ある日、
子どもたちを守るため、ライオンとたたかって、
片足を失ってしまいました。
その後、
みんなは、
エルフに食べ物をとどけました。
しかし、
日がたつにつれ、
ひとりぼっちになるエルフ。
そんなとき、
こんどは、黒ヒョウが襲ってきます。
エルフは、
最後の力をふりしぼり、
黒ヒョウに戦いをいどみました。
・・・
黒ヒョウは、逃げていきます。
子どもたちが エルフにお礼を言おうとすると、
もう、
そこに、
エルフの姿はありません。
エルフと同じ格好をした一本の木が立っているだけでした。その木の下に、泉がうまれます。動物たちはその木の姿を見るたびにエルフのことを思い出すのでした。
木版画の絵本です。うすい茶と黒を基調にした絵本は地味ですが、味わい深い感じです。ライオンと戦い片足をなくし、黒ヒョウと戦い命をおとすエルフ。エルフの勇気ある行動がかなしみと感動を誘います。エルフのことを仲間はきっと忘れないことでしょう。
エルフは未来に「一本の木」と「泉」を残しました。 読者のわたしは自分のことを考えます。この世界に何を残せるのだろうかと考えます 。子どもは決してこのようには読まないでしょう。
・・・
※『かたあしだちょうのエルフ』 おのき がく文・絵 ポプラ社 1970年 (2020/11/8)