文字のない絵本です。
「ニューヨークタイムズ・ベストイラスト賞」「カナダ総督文学賞」(児童書部門)(2015)を受賞しました。
・・・
お父さんと女の子。
袋の中に、バゲットが見えます。買いもの帰りのようです。
帰宅の途中、
おんなのこは、色とりどりの花を見つけました。
摘んだ花を誰かにあげるたびに、
絵本の世界は、
色鮮やかに変わっていきます。
死んだスズメに花を そなえる、おんなのこ。
ページをめくると、
公園は、明るい色彩に満たされます。
ベンチで寝ている人の靴に花を置く、おんなのこ。
こんどは、
犬と握手をしています。
犬の首輪にも花があります。
( もちろん、おんなのこがさしてあげた花です )
・・・
家に帰った、おんなのこ
部屋を通り抜け、
庭へ。
ママにも、弟にも、いもうとにも、髪に花をさしました。
庭から
また通りへ出る、おんなのこ。
白い花を頭にさす、おんなのこ。
でも、見返しを見ると
それは黄色い花に変わっています。
買いもの帰りの道にも、いろいろな出来事が待っています。道端で咲く花を摘み、死んだスズメを見つけ、ベンチで眠る人、犬、ママと弟や妹に花をあげるおんなのこ。彼女のやさしいこころと行動が世界を豊かにしています。 わたしたちのこころもやさしくなれる絵本です。
原題は、Sidewalk Flowers 「歩道の花」(2015) ですが、 『おはなをあげる』 という日本語のタイトルが素敵です。 お花をあげるのは誰なのか、タイトルだけでは分かりませんが、「花をあげる」行為がおんなのこだけではないことを暗示しています。「おはなをあげる」の「はな」は、目に見えない美しいこころを象徴しています。
※
文字のない絵本のすばらしさは、絵をみるだけで内容が分かることです。読者の文化や言葉を超えて絵本を理解できます。それができるのは、おんなのこの行為を美しいと感じる人間性にあります。
しかし、絵から、おんなのこをはじめ人物のこころは、はっきりとは分かりません。想像するだけです。人物のこころの中は言葉で表現するしかありません。
・・・
※『おはなをあげる』 ジョナルナ・ローソン作、シドニー・スミス絵 ポプラ社 2016年 (2021/5/23)