「うさぎのみみはなぜながいのか」という問いに応えたメキシコの民話です。反骨の画家といわれる北川民次(1894-1989)の作品です。
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むかし むかしの おはなし。
あるとき、
けものたちにいじめられているうさぎが、神様に願いました。
「おねがいです。わたくしを もっと おおきくしてください。」
「よし」といわれます。
(でも、その条件がすごい)
虎と、わにと、猿を殺して、その皮を持ってくること。
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うさぎはがっくり。
でも、森へ出かけて行きました。
虎 に会うと、
うさぎは一計を案じ、
大風が吹いてきて、みんな飛ばされてしまうと言います。
「おれは どうしたら たすかるだろう」
「いい かんがえが ありますよ」
太いつるを切ってきたうさぎ。
つるで体をぐるぐるまいて、木に縛りつけたらいいですよ。
虎を動けなくしてしまったうさぎ。
そして、棒で虎の頭を「ごつん」
「しめた」
うさぎは、虎の皮をはぎました。
( (゚д゚)! )
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つぎは、わに。
こんどは、巧みに口説き、わにを踊らせます。
「あとあしでたって、あたまを ぐっと うしろに そらすのです」
目がくらんできた わに。
うさぎは、棒で背中を殴りつけました。
わには、息がとまってしまいました。
こうして、わにの皮も手にいれました。
最後は、猿。
猿も、うさぎにだまされ、殺され、皮をはぎとられてしまいました。
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虎と、わにと、猿の皮を持って、神様の前にでたうさぎ。
「わたくしを もりの なかで いちばん おおきな けものに してください」ともう一度、願いました。
神様は言われました。
わたしは、おまえにすばしこさと利口な頭をさずけた、
このうえ、大きな体をさずけたら、森のけものを殺してしまうであろう。
「しかし、ひとところだけでも おおきくしてやろう」。
そして、
うさぎの耳を大きくした というおはなし。
おはなしは、悪知恵をはたらかせ策略をめぐらし、虎、わに、猿を殴り殺し、皮を剥ぎとる うさぎが 中心人物 です。うさぎの残虐な行為に顔をしかめる方もあるかもしれません。確かに残酷さをことさらに強調するのは子どもの文学として良いとは思いません。しかし、そもそも言葉はものではなく抽象的なものです。また、これはおはなしです。読者はおはなしであると分かって聞いていることでしょう。読者は、おはなしの必然的な筋としてこれを受け入れているのではないかと想像します。子どもたちがどのような感想をもつか聞いてみたいものです。
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また、メキシコに長く暮らし、メキシコ絵画に影響を受けた北川民次。ものをデフォルメした素朴な感じをあたえる絵です。輪郭線もしっかりと描かれています。写実よりもものの本質をズバリと表現する彼の絵画の特徴がよくあらわれています。
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※『 うさぎのみみは なぜながい 』 北川民次作・絵 福音館書店 1962年
【 追記 】
北川民次は静岡県島田市の出身です。静岡県立美術館に代表作「タスコの祭」(1937)が収蔵されています。 (2019/3/30)