おおはくちょうの かなしいおはなしです。
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北海道の湖で 冬を過ごし、
春、
北の国に帰る おおはくちょう。
しろい つばさが はるの ひかりに かがやきました。
しかし、
出発できない 6羽の かぞくがいます。
子どもの はくちょうが 病気です。
お父さんは いいます。
「このこが げんきに なるまで、きたの くにへ かえるのを おくらせよう」
春は、
かけあしで やってきました。
かぞくは、
北のくにに 帰らなければ なりません。
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やがて、
おおはくちょうの 一家は、
子どもを残して、出発する 決断をします。
病気の子どもを かこんで、親子は、鳴きかわします。
かぞくは なきながら、飛びまわります。
しかし、子どもは、飛ぶことはできません。
やがて、
みんなの すがたは 見えなくなりました。
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そのとき、
しろい かげが あらわれます。
かぞくは みんな もどってきたのでした。
しかし、
次の日、子どもは 亡くなりました。
そして、おおはくちょうの かぞくは 北の くにに かえって いきます。
冷たい空に、子どもの はくちょうの すがたが うかびあがります。
(下の絵)
最後の、この美しいシーンに 救われる思いです。
厳しい自然のなかに生きる、おおはくちょうの家族の愛がテーマの絵本です。かなしさとやさしさが、ないまぜになった体験です。
また、大自然の雄大さ、大空に舞うおおはくちょうの群、子ども守る家族を描いた版画が、すばらしい。水色の色調が、北海道の空気感を表現しています。そして、悲しみを際立たせています。
1988年、ニューヨークタイムズ紙が選ぶ世界の絵本ベストテンに選出されました。
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※『 おおはくちょうの そら 』 手島 圭三郎作、 絵本塾出版 2015年 (2017/9/12)