![](https://ehon.furuhashi-kazuo.com/wordpress/wp-content/uploads/2024/06/-e1719287637263.jpg)
わたしは、ウロ。
「雨」と「露」とかいて、ウロとよみます。
絵を描くのが、だいすき。
・・・
父さんは わたしを 絵かきにしようと決めました。
「ウロ、自画像を 描いてみたらどうだろう」
画材屋で、上等のキャンバスと 出会いました。
「雨露に さらしてつくられた、雨露(うろ)の麻です」
「わたしの名前とおんなじだわ」
それは、
油絵の大家の西窓先生が 注文したキャンバスでした。
しかし、
西窓先生は おととい とつぜん 亡くなられたのです。
ウロは、
そのキャンパスに 自画像を 描きました。
翌朝
キャンバスの自画像を 見ると、
絵具が 流れて
ドロドロの色に なっていたのです。
昼
ウロは、
新しい絵の具を ぬりかさねていきます。
でも、夜が明けると また
ドロドロの色に なっています。
・・・
ウロは、ひたすら 描きつづけました。
でも、自画像は、やっぱり ドロドロに なってしまいます。
「このキャンパス、きらい!
すててしまいたい!」
見かねた母さんは、草むらに キャンパスを かくしました。
「わたしの絵はどこ?」
ウロは 泣きじゃくりながら、さがしまわりました。
月が 空に登り
ようやく
草むらに キャンパスを 見つけました。
![](https://ehon.furuhashi-kazuo.com/wordpress/wp-content/uploads/2024/06/わたしを描く①-scaled.jpg)
2日後
ウロは、8人目のウロを 描きはじめました。
描きおえたウロは、
花柄の布を かけ、
何日も 絵を 見ようとはしませんでした。
数日後
花柄の布を とると、
キャンパスには、まぎれもない ウロのすがたがありました。
絵の中のウロは にっこり わらっていました。
・・・
完成したと思ったら、絵具が流れて ドロドロの色になったウロの自画像。ウロは、苦しみながら7回も、絵を描き直します。母さんが、キャンパスを隠してしまいますが、彼女はそれ見つけ、もう一度自画像を描きます。それは、自分自身と向きあうすがたです。ドロドロになったキャンバスは、成長する子どもの前にたちふさがる壁です。
自画像を描くことを通して、自分自身を見いだすウロの成長物語でです。少年や少女から、大人へと一歩をふみだす若者たちへの応援歌です。
「雨露」には、「《雨と露は地上のすべてのものを潤すところから》広大な恵み」の意味があります(デジタル大辞泉)
・・・
※『わたしを 描く』 曹文軒作、スージー・リー絵、申明浩・広松由希子訳、あかね書房 2024年 (2024/7/3)