ふるはしかずおの絵本ブログ3

『かぜひいちゃった日』- アヒルさんたちとわたし

わたしとアヒルさんたちの世界を、

わたしの視点から描いた、ファンタジックなはなしです。

       

      

オンマ(おかあさん)が、

あったかいダウンを 買ってくれた。

でも、よーく見ると、

ダウンから 羽が一枚 飛びだしていた

なぜかな、と考えているうちに 眠ってしまった。

      

 

目をさますと、

わたしの前には、たくさんの アヒルがいます。

一羽のアヒルが言いました。

 

 「きみの ダウンの なかの はねを、

  ぼくたちに くれない?

    

とっても寒いからと言うのです。

わたしは、羽を 一枚一枚取り出して、アヒルさんたちに つけてあげました。

 

 「やったーっ!」

 

わたしとアヒルたちは、向こうの丘まで かけていき、

橇で 滑りっこ。

かくれんぼ。

くしゃみが出そうになり、

  

   

 「ハ、ハ、ハッ、クション

      

   

わたしは、いまは ベッドの上。

いままでのことは 夢だったみたい

オンマは、布団を かけていないから、風邪を ひいたんだと言った。

でも、わたしは、

アヒルさんたちに ダウンの羽根をみんなあげちゃった 

からなんだけどなぁ、と思うのです。

     

 

風邪が なおり、

登校の途中、

風が吹くと、

わたしの ダウンのなかの羽が 一まい 飛びだしました。

あれ、

みんな アヒルさんたちに、あげてしまったのに・・・

      

         ・・・

わたしの想像力が生みだした世界です。想像の世界に入るところが、「めをさますと、わたしのまえに アヒルが たくさん あつまっていた」と言うところが洒落ています。 目をさまして見ている世界が、まさに夢(空想)なのです。

 

最後に「いままでのことは夢だったみたい」と種明かしをしてくれますが、読者は「夢」のことだと言って済ませる訳にはいきません。みんな見てきたからです。そして、ダウンの中の羽根をみんなアヒルさんにあげる、やさしい「わたし」、風邪をひいてしまった「わたし」に 読者は共感することでしょう。

 

絵は素朴な感じで、「わたし」が描いた絵のようです。文章と絵の雰囲気がぴったりです。ハングル語の文章がついています。

      ・・・

※『かぜひいちゃった日』 キム・ドンス作・絵、ピョン・キジャ訳、岩崎書店 2004年  (2024/6/5)

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