アメリカの教育家
ブッカー・T・ワシントン ( 1856~1915年 )の
少年時代を えがいた 絵本です。
・・・
朝は
まだ きません。
パパと
ジョン兄さんと
ぼくは、
岩塩の 精製所に はたらきに でかけます。
それは、塩を 樽につめる つらい仕事。
ぼくは 9歳。
ぼくは 思うのです。
本が 読みたい、
字を書いてみたい、
本には きっと
すばらしい世界が
かくされているに ちがいない と。
ぼくたちは もう奴隷じゃない。自由になったのです。
( 「 奴隷解放 宣言 」 は 1863年でした。 )
荷車のうえで、 大きな声で
新聞を よみあげている 人がいます。
ぼくと おなじ黒人なのに 新聞が読めるのです。
かれは ぼくの希望でした。
「 ママ、 ぼくは 字を ならいたい 」
くるしい生活のなかから
ママは、
ある日
青い表紙の ちいさな本を わたしてくれました。
本を 読んでもらうため、
ぼくは あの男の人を さがします。
ぼくの 希望でもある あの人を。
・・・
その人は
文字を読んで、 声に だしてくれました。
ぼくも、 いっしょに その音を 声にだしました。
新しい世界に はいったんだ。
希望が 生まれたんだ。
そして、
B o o k e r と
自分の 名前を 地面に書いてもらうのです。
ぼくは、 書かれた その文字を 見つめた。
ぼくは、 そのときのことを けっしてわすれない。
ランプが 輝いています。
文字は、絵のなかのランプのように、世界を照らしました。
そして、世界のとびらを開き、ぼくの可能性を広げたのです。
・・・
※『 ぼくが 一番 望むこと 』 マリー・ブラッドビー文、クリス・K・スーンピート絵、斉藤規訳 新日本出版社 2010年 小学校中・高学年向き。
「 作中の小さな本は、18世紀から19世紀の アメリカ合衆国で もっともよく読まれた ノア・ウェブスターの綴り方教本です。 その姿から『 ブルーバック・スペラー 』と よばれていました 」 ( 訳者 )