インドの昔話、「数」のお話です。
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昔、
インドに、ひとりの王様がいました。
王様は、とれたお米を ほとんど取りあげました。
「飢饉の年がやってきたら、米をみなに分けあたえよう。飢え死にすることがないように」と言って。
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ある年、
飢饉がやってきました。
ひとびとが食べるお米がありません。
大臣たちが頼みました。
「お米をひとびとに分けあたえてくださいませ」。
「ならぬ!」
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王様は、
宴会のために米を運ばせました。
村娘のラーニは、こぼれた米を 王様に返しにきます。
王様は、感心しました。
「なんでも好きなものを ほうびにとらせよう」
ラーニは答えます。
「きょうは、お米を1粒だけくださいませ。そして、30日のあいだ、それぞれ前の日の倍の数だけお米をいただけませんか」
このあとはわかりますね。
はじめは1粒
次の日は2粒
4
8
16
32・・・
16日目は、32768 粒になりました。
「あんがいと おおくなるものだな・・・だが、しんぱいするには およぶまい」と王様は思いました。
20日目は、 524288 粒
25日目は、 16777216 粒
30日目は、 536870912 粒になりました。
米倉の米を、256頭のゾウが運んでいきました。
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全部たすと1073741823 粒になります。
10億以上です。
ラーニは、そのお米を お腹を空かせている人にみんな分けてあげました。
2の30乗ともなると、大きな数字になるものです。それを既に知っていたラーニ。本当に賢いラーニです。数のふしぎ、おもしろさに惹かれます。
また、インドの細密画風の絵です。エキゾチックな絵もおもしろい絵本です。観音開きのページは圧巻です。読者を「あっ」と言わせることでしょう。
日本にも、曽呂利新左衛門の逸話があります。
豊臣秀吉から「褒美として何が欲しい」と言われて、 今日は米1粒、翌日に倍の2粒、その翌日には倍の4粒と「倍々」にして、100日もらうことを希望したというはなしです。秀吉は、その数が膨大なものになる事に気づき、別の褒美に変えてもらったということです。
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※『1つぶのおこめ』 デミ作、さくまゆみこ訳 光村教育図書 2009年 (2022/6/4)