雨が降り、雷が鳴り、
雨が止み、空気が透きとおり、
星がかがやく、いちにちを描いた絵本です。
空は、いろいろな表情をみせ、移り変わります。
・・・
あっ 雨
だん
だだん
だんだん
雨はつよくなり
青や緑の世界が 灰いろになり
雨が
ふきぶり
よこなぐり
雷が鳴る。
だだだ だーん
だだだだだ だーん
運命みたいに たたきつけ、
だーんだーん だーんだーん 遠くなり、しずかになって
あ やんだ
だんだん 明るくなり、
みどりいろは みどりいろに。
空いろは 空いろに。
空気が透きとおり
草花のうえの 雫がこぼれ
ちらばり
だんだん
光は きんいろに
水は ぎんいろに。
夕方になり、
山々のかたちが 空に くっきりうかんで
白い月 みーつけた
いちばん星 みーつけた
鳥たちが かえってきて
夜空が ひろがり
星たちが きらめきはじめ、
星たちは ものがたりを 話しだす
雨の星の 雨の神さま
おやすみなさい
だんだん ねむくなってきて
だんだんだんだんだんだん
だんだんだんだん
だん だ ん
イメージの流れをたいせつにしてまとめましたが、お断りしなければならないことは、ここに書いた文章は、長田弘(1939-2015)さんの詩ではありません。詩については、絵本をご覧ください。長田弘さんは、「かけがえのない一日の絵本として、みんなに手渡すことができればうれしいです」と語っています。
2011年、東日本大震災の年の秋に出版された絵本です。
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※『空の絵本』 長田弘作、荒井良二絵、講談社 2011年
【追記】
荒井良二(1956-)さんのメッセージです。
「長田弘さんと絵本を作るときは、独特な緊張感と言葉からも解き放たれるような高揚感の中で絵を描き進めます。木は木になるように念じ、そして森になるようにと。空は空になるように念じ、そして空気になるようにと。長田さんの書かれた言葉たちがぼくが描いた絵の大気の中に溶け込んで音になり、読み手に伝わるようにと願いつつ、その音を頼りに筆を運んでいきます。この本が、東日本大震災、そして、原発の人災が起こった2011年という年に出版されたことに大きな意義を感じながら、一本の木のように息の長い絵本になってくれることを信じています。」 (2023/4/4)