ふるはしかずおの絵本ブログ3

『心をひらいて、音をかんじて』- 「あなたの心の声を聞くことを忘れないで」

12歳で聴覚を失った、エヴェリン・グレニー(1965-)。

困難を克服し、打楽器奏者になった彼女の半生を描いた絵本です。

  

    ・・・

スコットランド

丘の上の農場で育った エヴェリン。

音楽が 大好きでした。

 

しかし、

耳に痛みを かんじるように なりました。

お医者さんは、

補聴器をつけ、

ろう学校に 行くことを すすめます。

父親は 言いました。

 

 「耳が きこえなくなっても、この子が やりたいことをさせます」

   

   

地元の中学校へ すすみ、

打楽器と 出会い、

わたしのやりたいのは、これだ!って、思いました。

   

打楽器が専門のフォーブズ先生が、言います。

 「補聴器をはずしたほうが、よく聞こえるとおもわないかい?」

 「音をかんじて」

   

ティンパニをたたいて、言います。

 

 「いま、体のどこで音をかんじた?

    

 

その言葉が、

エヴェリンの人生を 変えました。

おおきな振動が

おなか、背中、足に つたわります。

全身が 耳になったようです。

外の世界の ざわめきも、体じゅうに かんじます。

   

エヴェリンの感覚は、どんどん するどくなりました。

 

 

英国王立音楽院に 入学し、

2年生のときに、打楽器のコンクールで 優勝します。

卒業後、

バルトークの「二台のピアノと打楽器のためのソナタ」のアルバムは

グラミー賞に かがやきました。

いま、

世界各国のひとが、彼女の演奏を きいています。

   

語り手は結びます。

    

 だれにもたくさんの可能性があり、

 どんなときでも、どこかに道は見つかります。

  あなたの心の声を

   かんじることができたら

    きっと・・・

     

    

絵本の文章です。

耳の聞こえる人は、空気のふるえを耳でかんじて、音に変える。わたしは空気のふるえを体でかんじる。わたしたちはただ、やり方がちがうだけなんだ」。

   

巻末に、「作者より」と「読者のみなさんへ」のエヴェリン・グレニーの文章があります。また、本書は、障がいを取り扱った児童書におくられる「シュナイダー・ファミリーブック賞」(2023 年度)を受賞しました。

    ・・・

※『心をひらいて、音をかんじて』 シャノン・ストッカー文、デヴォン・ホルズワース絵、中野怜奈訳 光村教育図書 2023年  (2023/8/20)

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