ふるはしかずおの絵本ブログ3

『年をとったひきがえる』- 巧みなおはなしの展開

かえるを捕食しようとする サギ

サギからのがれようとする 年をとった ひきがえる

生死をかけたドラマがおこります。

      ・・・

暑い夏の日、

年をとったひきがえるが、岩の上で日光浴をしています。

つやつやとした なめらかな肌。

ひきがえるは、眠っているように見えます。

けれど、眠ってはいませんでした。

      ・・・

リス、

ヤマアラシ、

シカを 見ています。

キツツキが、木をつつく音を 聞いています。

しかし、サギのすがたは、見えませんでした。

 (ここで視点が、ひきがえるからサギに転換します)

      ・・・

サギは、

お腹を すかせていました。

食べものを さがしています。

かえるを食べるのが大好きな サギ。

ゆっくり、注意深くうごく サギ。

サギは、片方の足を もちあげ、

しずかに 足をおろす。

ガマのなかに じっと 立っている。

サギは、池の岸にそって ゆっくりと歩む。

ひきがえるに向かった。

     ・・・

サギは、ゆっくりと 片方の足を持ちあげた。

 (ここで、ふくろうとかたつむりのことが書かれています。)

 (読者を焦らす巧み表現です。)

サギは、ひと足を踏みだす。

ひきがえるに近づいた。

 (ユリの花の香り、ブンブン飛ぶみつばちの文があります。)

 (焦らされる!)

ひきがえるは、眠っているように見えた。

 (あぶない!

      ・・・

するどい嘴がひらく、

次の瞬間、

サギは嘴をふりおろした!

あおいいろのカケスが、ひと声 するどく ないた

      ・・・

ドプン!

年をとったひきがえるは、池に飛びこんだ。

 (視点は、再びひきがえるに。)

ひきがえるは、眠ってはいなかった。

わかっていたのだ。

なぜなら、かれは、とてもながく この池で生きてきたのだから。

スリルとサスペンスでおはなしが展開されていきます。サギがひきがえるを狙っているのに、ひきがえるは気づいているのでしょうか。サギのことはわかっているのに、ひきがえるがそれに気づいているか、読者は知りません。人物と読者のこの関係からスリルとサスペンスがうまれます。

また、ひきがえるに危機が迫る肝心な場面で、ふくろうやかたつむり、ユリの花の香りやブンブン飛ぶみつばちのことが書かれています。読者の関心はひきがえるとサギにあるのに。焦らされる! 巧な文章運びです。

    

また、さまざまな生きものが登場します。

虫たち、ツグミ、さかな、羽虫、リス、ヤマアラシ、シカ、キツツキ、カラス、くも、あおむし、ふくろう、かたつむり、みつばち、カケス。これらの動物も、この世界を彩ります。また、しろい雲、あおい空、サギが身を隠すガマ、キンポウゲ、ユリのあまい匂いもそうです。

絵本の文章は「だ」「である」の常体です。生死のドラマには常体の文章体が合います。

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※『年をとったひきがえる』 バーニース・フレシェット文 ロジャー・デュボアザン絵 はるみこうへい訳 童話館出版 2001年  (2020/3/2)

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