ふるはしかずおの絵本ブログ3

『川はながれる』-おなじときに、どこにでも、いることができる

33ちいさい川が、
自分を見つめながら、海へたどり着くおはなしです。
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はるかかなたの 寒い北国、その山奥で、ちいさい川が生まれました。
どこへいけばいいんだろう」と、川は考えます。
シカやクマに、たずねながら、
岩から 岩へ、
山から 山のふもとのひろい平野へ ながれていきます。

雨がたくさん降り、
ちいさい川は、草をかきわけ、かきわけ、ながれていきます。
「きれいな みずうみにでるよ」とキジ。
みずうみに 流れこむと、
みずうみは 怒ります。「川は、海にながれこむものだぞ。」。
「ごめんなさい」。
・・・
つぎの日、
ちいさい川は、町のなかへ。
でも、ちっぽけな川といわれてしまいます。
「町はこりごりだ。やっぱり 海をみつけよう。」

そして、野原へながれていきます。
アヒルやガンにあいさつし、ウシに水をやり、子どもたちに声をかけ・・・
沼地に ながれこみ、
三日あとの、よく晴れた あかるい朝、川は海までやってきます。
「なんて きれいなんだ。」

でも、
広い海を前にして、自信を失ってしまう、ちいさい川。
その時、カモメがいいます。
川は、太陽や空気みたいなもの。おなじときに、どこにでも、いることができるのさ。あっちにも、こっちにも、とおくにも、ちかくにも」。

ちいさい川は、理解しました。

これまで たびしてきたところ どこにでも、じぶんがいるということを。おなじときに、どこでも、いることができるということを!
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起伏があり、ドラマがあり、様々なものと出会う川は、わたしたちの人生を語っています。また、「どこにでも、じぶんがいる」「おなじときに、どこにでも、いることができる」と言っています。川は、実体ではなく、絶え間ない水の流れのことです。固定したものではありません。常に変化しています。「あっちにも、こっちにも、とおくにも、ちかくにも」あります。また、水はわけても水、足しても水。水は水です。ちいさい川の水は、人生だけでなく、こころの比喩にも見えてきます。
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ロジャンコフスキーの絵がとても魅力的です。うつくしい景色、いきいきとした動物たち、さまざまな表情を見せる川、自然をあたたかく優しいタッチで描いています。
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※『 川は ながれる 』 アン・ランド作、ロジャンコフスキー絵、掛川恭子訳、岩波書店 1978年( 初版は1959年 ) (2011/12/1)

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