『よるくま』で人気の酒井駒子さんの絵本です。
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ロンパーちゃんは、街でふうせんをもらいました。
家の中で、ふうせんとあそぶロンパーちゃん。
あれ あらら
ふうせんは天井に。
手が届かないロンパーちゃん
「おかあさん おかあさん」
「やれやれ どうぞ」
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あれ あらら
また、ふうせんは また天井に。
おかあさんは
スプーンにふうせんをくくりました。
ふうせんは
ういているのに とんでいかない
とんでいるのに ういている
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ふうせんは、人物のように見えてきます。
お庭に遊びにいく ロンパーちゃん。
綺麗な草のかんむりを風船につけてあげます。
自分も花のかんむり。
そして、いっしょにままごと遊びです。
ピュウ!
風が吹いて、ふうせんは 木にひかかってしまいました。
おかあさんもとれません。
「もう あきらめましょう ロンパーちゃん」
ロンパーちゃんは、悲しくなりました。夕ごはんも美味しくありません。
「だって わたし ふうせんと いっしょに たへる やくそく したのに」。
いっしょに寝る約束までしていたのに。
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かあさんは
明日、はしごを借りて、風船をとってあげると約束します。
「ほんとうに ほんとうに?」
「ほんとうよ ロンパーちゃん」
やっと 泣きやんだ ロンパーちゃん。
そして、こう思いました。
(ロンパーちゃんのふうせんは - おつきさん みたいよ…)
おさないロンパーちゃんとやさしいかあさん。風船を指差す姿、ままごと遊びや涙をこぼす姿などロンパーちゃんの仕草がひとつひとつが、ていねいに描かれています。そして、かわいらしい。
また、黄色の風船がとても印象的です。スプーンがくくりつけられた黄色の風船は、ロンパーちゃんの遊び相手です。感情や表情をもった人物のようです。読者も、ものとしての風船ではなく、人間のような人物に見えることでしょう。そして、最後は「ロンパーちゃんのふうせんは - おつきさん みたい」です。同じ黄色い風船が、場面の展開にしたがってイメージをだんだん変化させていきます。
確かにものとしての風船ですが、もの(宝物)でもあり、人物(ともだち)でもある、ふうせんの揺れうごく微妙なイメージの変化を描いています。
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※『ロンパーちゃんとふうせん』 酒井駒子作・絵、白泉社 2003年 (2019/11/3)