
『博士の愛した数式』の小川洋子さんの初の絵本です。ボタンちゃんは、アンナちゃんのブラウスの一番上にとまっています。ボタンちゃんの仲良しは、ボタンホールちゃん。ふたりはいつも一緒です
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ところが、
ある日、ボタンちゃんの糸が切れてしまいました。
ボタンちゃんはコロコロとこがっていきます。ついたのは、おもちゃ箱の裏側です。すると、どこからか泣き声が聞こえてきます。
泣いているのは、ガラガラでした。
「アンナちゃんはもう、ぼくのことなどわすれてしまったのでしょうか」
アンナちゃんが大きくなったのは、
「あなたのおかげね」
とボタンちゃんは、ガラガラを慰めます。

ボタンちゃんは、 コロコロと転がって洋服ダンスのうらへ。
そこにいたのは、
くしゃくしゃで、皺だらけのよだれかけ。淋しく泣いています。
アンナちゃんが上手にご飯を食べるようになったのは、
「あなたの友情のおかげね」
とボタンちゃんは、よだれかけを慰めます。
次に転がった先はベッドの下です。
ホッキョクグマのぬいぐるみがいます。アンナちゃんに忘れられ「ふーっ」とため息をついています。
ボタンちゃんは、ホッキョクグマを慰めます。
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「あら、こんなところに・・・」
ママがボタンちゃんを見つけ、ブラウスに縫いつけてくれました。
ガラガラ、よだれかけ、ホッキョクグマを見つけたママは、みんなをきれいに洗って『思い出の箱』にしまいました。
アンナちゃんはもっと大きくなりました。ブラウスはアンナちゃんには小さくなりました。『思い出の箱』にしまわれる時がきました。
「こんにちは」
ボタンちゃんは、ガラガラ、よだれかけ、ホッキョクグマに言いました。ボタンホールちゃんも挨拶をしました。みんな、『思い出の箱』からアンナちゃんの無事を祈っています。
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ガラガラ、よだれかけ、ホッキョクグマも、アンナちゃんの子育てに関わっています。赤ちゃんの時の思い出の物たちです。ボタンちゃんも『思い出の箱』にしまわれるところは、ちょっと切ない気持ちになります。アンナちゃんは大きくなりました。みんな、成長したアンナちゃんのことを喜び、アンナちゃんの無事を祈っています。淡い色合いの絵は、アンナちゃん、ボタンちゃん、ボタンホールちゃん、ガラガラ、よだれかけ、ホッキョクグマを優しく包んでいます。
教育のことを学んでいて、
「子どもは成長する」の事実に、はっとしたことがあります。
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※『ボタンちゃん』 小川洋子作、岡田千晶絵、PHP研究所 2015年 (2022/3/11)