スウェーデンの絵本作家、エルサ・ベスコフ ( 1874 – 1953)の1912年の作品です。ペレが新しい服を手に入れるまでのはなしですが、古さを感じません。
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ペレは、
自分のこひつじを1ぴき 持っていました。
ひつじは、おおきくなりましたが、
ペレの上着は、みじかくなりました。
(ペレもおおきくなったんです)
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ペレは、
ひつじの毛を刈り取り、おばあちゃんのところへ。
「このけを すいてくれない?」
「にんじんばたけの くさとりをしてくれるならね」
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ペレは、
梳いた毛をもって、もうひとりのおばあちゃんのところへ。
「このけを いとに つむいでくれない?」
「わたしのうしの ばんをしてくれるなら」
つぎはペンキ屋のおじさん。
ペレは、糸を染める 染め粉をくださいとたのみます。
「ばかだね、ペンキとそめこは ちがうんだよ。うちには、そめこはないよ」
でも、
テレピン油を買ってきてくれるなら、
おつりで染め粉をかっていいとよ、言ってくれました。
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ペレは、自分で糸を染めました。
糸は濃い青になりました。
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ペレは、おかあさんにたのみます。
「このいとで、きれを おってくれない?」
「いもうとを みててくれるならね」
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最後は、仕立て屋さん。
「このきれで、ぼくに ふくを つくってくれない?」
仕立て屋さんは、
干し草を集め、
薪をはこび、豚にえさをやってくれるなら、と言います。
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日曜日の朝、
ぺれは、新しい服を着て、こひつじのところへ。
「あたらしいふくを ありがとう!」
「べーエーエー」
こひつじは、まるで笑っているようでした。
出版から100年以上経っているのに、服装は昔風なのに、古めかしく感じないのはなぜなのでしょうか。
絵の力があります。
絵の中の人物の描写が正確です。にんじん畑の草取りをするペレ、糸を染めるペレ、妹の世話をするペレ・・・ そして、ペレの周囲の人物たちも生きいきとしています。スウェーデンの美しい田園風景を背景にして、羊の毛を刈り、梳き、紡ぎ、織り、染め、布を仕立てる生活の風景がしっかりと描き込まれています。
文章の力があります。
ペレがこひつじの毛を刈りとり、あたらしい服を手に入れるまでのシンプルなはなしですが、くりかえしの表現が巧みに用いられています。登場人物たちにリアリティがあります。
また、梳き、紡ぎ、織り、染め、布を仕立てる、それぞれの段階でペレは働いてその成果を得ています。ペレのような姿は、今では身近に見られませんが、自分の力で問題をひとつひとつ解決して新しい服を手に入れるところに、いまに通ずる真実があります。これからも、ずっと子どもの身近にある絵本であってほしいと思います。
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※『 ペレの あたらしいふく 』エルサ・ベスコフ作・絵。小野寺百合子訳、福音館書店 1976年 (2020/1/26)