3人兄妹の末っ子のティッチのはなしです。
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兄さんのピート
姉さんのメアリ
末っ子のティッチは 小さな男の子でした。
ピートとメアリ
大きな自転車。
ティッチは
三輪車。
ピートとメアリ
大きな凧。
ティッチは 風車。
ピートは おおきな たいこ
メアリは ラッパ。
ティッチは? 木の笛です。
ピートは おおきな シャベル
メアリは おおきな うえきばち
ティッチは とても ちいさな 種でした。
でも、
その種は
芽を出し、
ぐんぐん、ぐんぐん
おおきく なりました。
ティッチより、ずっと大きくなりました。
それを見て、誇らしげな、ティッチです。
「みそっかす」という言葉があります。「子どもの遊び仲間にも入れてもらえないような小さい子ども」のことですが、末っ子のティッチはまさにそれです。「ティッチ」というタイトルからわかるように、作者は、読者はティッチに同化して読んでほしいと考えているように思います。
でも、みんな、大きくなります。成長します。末っ子のきみだって。
ところで、読者がティッチに同化して読むには、3人の人物の関係を前もって分かっているが大切です。読む前に、3人の関係をわかるように、絵本への「橋渡し」が必要かもしれません。3人の人物の関係が分かることで、「みそっかす」の立場に置かれた末っ子のティッチの思いが、より身近に感じられることでしょう。
パット・ハッチンスの別の絵本、『ロージーのおさんぽ』も、文字がすくないので、やさしい本のように思えますが、主人公のめんどりのロージーと、ロージーを食べようとする狐の関係がわかっていないと、絵本をじゅうぶんに楽しむことができません。大人は、絵本のなかの人物の関係がすぐに分かりますが、『ロージーのおさんぽ』に限らず、子どもは、絵本の中の人物の関係がすぐには分からないことがあります。
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※『ティッチ』 パット・ハッチンス作・絵、石井桃子訳、福音館書店 1975年 (2022/12/8)