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リョウと かげぼうしのおはなしです。
ユーモアもたっぷり含んだ『ジュース』です。
・・・
梅雨があけた、
夏の日、
リョウは外へ飛びだします。
しばらく走っていると、
あれ、
かげぼうしが、リョウから離れ、おくれています。
・・・
「リョウ、ちょっと、まっておくれよ」
「はやく、ぼくの あしに ちゃんと くっついて」と言って、
走り出す リョウ。
ジュース・スタンドで、ジュースを買って、ごくごく。
かげぼうしが いません。
おおい、かげぼうしやあい。
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おまわりさんに聞くと、
かげぼうしは、物干しにかけてあります。
君が蹴とばして、海に落ちてしまった、といわれます。
「もう、かわいたかな」
・・・
「もう つきあってあげないから」と、かげぼうし。
「ごめん。・・・そういわないで」と、リョウ
「やなこった」
「きげんを なおしてくれよ。なにか おいしいもの あげるから」
「じゃ、オレンジ・ジュース。」
リョウが、缶を開け、かげぼうしに飲ませようとすると、
うまくいきません。
「ちえっ」
みんな地面に、こぼれてしまいます。
「ああ わかった。・・・リョウが のめばいいんだ」
「ぼくが?」
リョウがジュースを飲むと、
かげぼうしも 飲んでいます。
「おいしい? かげぼうしくん」
かげぼうしは だまっています。
「ぼくは とても おいしい」
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かげぼうしが、リョウから離れてしまう発想のユニークさ。リョウとかげぼうしの会話のおもしろさ。また、リョウの表情としぐさがとてもいいのです。生き生きとしています。杉浦範茂さんのすばらしい絵です。
リョウが「ぼくは とても おいしい」と言ってジュースを飲むことが、かげぼうしが飲むことにもなる当たり前の事実が気になりました。ここに象徴的な意味を感じます。
かげぼうしは、もしかしたら、親の喩えかもしれません?
リョウ(子ども)が「とても おいしい」と言ってジュースを飲むこと(体験すること)は、かげぼうし(親)が飲むこと(よろこぶこと)にもなると解釈したら、かげぼうしとは親のこと。
絵本のそでにある三木さんのことばです。「男の子は元気がいい。かげぼうしを困らせながら大人になります」。
・・・
※『ジュース』三木卓作、杉浦範茂絵、鈴木出版 2019年